崩れゆく遺産、サンメッザーノ城を救え!

もう6年ほど前から、追いかけている城があります。それは、フィレンツェ県東南の山の上にある、Castello di Sammezzano =サンメッザーノ城です。城を建てたのは、多様な才能を持つ知識人・Ferdinando Panciatichi (フェルディナンド・パンチャティーキ)侯爵。芸術保護活動なども盛んに行い、市議会議員から下院議員までのぼりつめた人物ですが、政治活動から離れたあとは一家が引き継いでいたこの地に引きこもります。そして、建築家、エンジニアとして、1843年から50年近くの歳月をかけて“ 夢の城 ” の建築に生涯をかけたのです。19世紀のヨーロッパ、そしてフィレンツェにも例外なくオリエンタリズムの潮流が到来し、Villa Stibbert(スティッべルトの館、現在は博物館 )やシナゴーグなどが続けて建てられました。その中でもサンメッザーノ城は、インドやペルシア、トルコなど、様々な国からイスピレーションを受けた折衷様式建築の最高傑作と言われています。驚くべきことは、フェルディナンド自身はそれらの地を訪れたことはなく、文献だけでサンメッザーノ城を建てたこと。

しかしここまでフェルディナンドが情熱を注いだ城も、彼の死後の所有者は転々。高級ホテルとして使用された時期もあったものの、1990年代に城の所有会社が破綻してからは完全に放置され、盗難、そして老朽化がすすみます。そんな中、城の文化的価値を知るボランティアによる非営利団体  COMITATO FPXA  が2012年に発足し、所有者とコンタクトをとりながら、年に1度の無料一般公開を行っていました。公開日・見学申込要項は上記団体サイト・ Facebookページ のみでの告知で、私もチェックをかかさず2015年9月のネット申込に挑みました。イタリアでは注目度が上がっているので難しいとは聞いていたものの、やはり先着800名には遠く及ばず。申し込めたのは申込開始からわずか「43秒」の間に送信できた人だけで、私はほんの数秒間に合わなかったのでした(1万人以上のアクセスが殺到して申込フォームを目にする事さえできなかった人もいたそう)。この時は見学できなかったのですが、これ以後は新規受付は行わず過去に外れた人を順次招待していく形になり、私も遂に2016年の10月に見学に行くことができたのですが・・・

老朽化に歯止めがつかず、結局この見学会を最後に、今もサンメッザーノ城は放置されっぱなし。その頃から所有者の負債賠償のために競売にかけられていますが、買い手も見つからず。この4年間にその状態はますます悪化をたどるばかりです。そんな中、前述の COMITATO FPXA  と、競売で買取ってリゾートホテルにしようとした外国企業に恐れを抱き発足したアソシエーションSAVE SAMMEZZANO 、サンメッザーノ城のあるレッジェッロ市などがともに、FAI(イタリア環境基金)の I Luighi del Cuore に立候補し、見事に1位に輝くのですが・・・民間会社の所有であるがために修復プロジェクトのための資金は凍結されたまま。模索して挑んできたことが行き詰まる中、ますます忘れ去られるサンメッザーノ城。そして今、起死回生のきっかけをつかむため、史上初の2回連続1位を目指し、再度 I Luighi del Cuore に立候補しています。投票締め切り間近の今、1位と2位が大激戦中で、イタリア中のサンメッザーノ城の支持者、ファンが必死になって投票運動中・・・1票がものを言う接戦です。なので

ぜひ、日本の皆さんでこのストーリーに感銘を受けた方、いつかは行ってみたいと思われた方は、ぜひ、投票をお願いします!

👇👇👇

I Luighi del Cuore への投票方法(12月15日まで)

1)このサイトにアクセス

2)CASTELLO E PARCO DI SAMMEZZANO の「VOTA CON 1 CLIC」をクリック (順位は毎週変わりますが、1位か2位か)

2)フェイスブックかFAIのアカウントでログイン、またはFAIに新規登録が必要

3)データを記入して新規登録

4ー1)フェイスブックでログインしたら、1)の画面になりますので、「VOTA CON 1 CLIC」を再度クリックしたら、投票完了!

4ー2)FAI に新規登録した方はメールが来るので、ATTIVAを押す ➡️ FAIにログイン ➡️ 1)の画面になりますので、「VOTA CON 1 CLIC」を再度クリックしたら、投票完了!

 ➡ Grazie per aver votato( 投票ありがとうございます)の文字がでます。

➡ 投票出来たかを確認するには、1の最初の画面に戻り、「VOTA CON 1 CLIC」 「FAI VOTARE TUOI AMICI」に変わっていればOK。まだVOTA CON 1 CLIC」のままでしたら、再度クリックして下さい。投票出来ていれば、「FAI VOTARE TUOI AMICI」になります。

2016年10月の見学ツアーの様子

では、実際に私が4年前に参加したツアーを写真で再現します。山のふもとにあるのは、高級ブランドアウトレットで有名なTHE MALL。もし見学が再開になれば、フィレンツェからアウトレット行きの直通バスが使えるので、大変便利です。アウトレット前の大通りから標識に従って山に入り、城までは徒歩30分ほど。

サンメッザーノのすごいところは城だけでなく、イタリアでは稀有な世界の植物を集めたこの公園です。ギャラリーに掲載しますが、高さ50mもあるセコイアの林など、全部で65ヘクタール。アウトレットからは別世界の、緑に囲まれた静寂な世界・・・今から150年以上前、この地に引きこもったフェルディナンドは何を思っていたのでしょうか?

そして木々の茂みから、遠くに見えるサンメッザーノ城。人の大きさを見ると、どれほどの規模か分かって頂けると思います。この姿を見て、一言で言うと感動、なんですが、何回も見てたせいか、昔から知ってる人に何十年かぶりに会えた!ような、私をずっと待っててくれたような、なんとも不思議な熱い思いが。そして、もしかしたら近い将来、崩壊してしまうかもしれない、もう二度と見られないかもしれない・・・そんな思いもこみ上げて来て入る前からすでに泣きそうになってしまいました。

城の中央下で、日を指定したメールを印刷したものとチケットを交換し、小グループになって見学を開始します。私たちのガイドは、幸運にも Comitato FPXA 1813-2013 会長のマッシモさん。1階はホールとトイレなどだけで、見学のためにまずは階段で2階へ・・・

最初の部屋がこの「柱の大広間」➡ 動画はこちら。ご覧にように、右も左も上も下も凄すぎて言葉が出ず、目に焼き付けたい!写真や動画もとっておきたい!と興奮が収まりません。

ここからは3部屋、白い部屋が続きます。まずは「星の間」。

「白の間」➡ 動画はこちら

そして「蝶の間」。白いので分かりにくいですが、その装飾の細かさに驚くばかりです。特に蝶の間はあらゆる場所に鏡の部分があり、キラキラと華やかで幻想的。写真がブレているのは、建物内はほぼ電気がなく自然光だけだから。部屋によってはかなり薄暗く、かつ狭い部屋では人も押し気味で自由に動けませんでした。


そして「鍾乳石の廊下」などの通路を通りますが、やはり電気がないので、小型懐中電灯で説明箇所を映し出しながら。ここから2つ3つ小さな間を通り、たどり着いたのは「百合の間」。

テープが張られているのは、この日の明け方までの大雨で雨漏りして漆喰が剥がれ落ちていたそう。早朝に到着したスタッフが見つけた時に見学は無理かも、と思ったほどだったそうですが、掃除をして一部立ち入り禁止にすることで、なんとか見学ができるようにしてくれました。

この天井が美しくて美して。ちなみに、このテラスからは音楽奏者が演奏をしたそう。

その後は「宣誓の間」➡ この2つの間の動画はこちら

そして、サンメッザーノ城でおそらく一番有名な「クジャクの間」に入ります ➡ 動画はこちら

語彙のなさが申し訳ないですが、もう「すごい」「圧巻」としか言いようがありません。口を開けたまま、ただただ見入るだけ。しかしこの間、なんだと思います?

これは、別の部屋から料理が運ばれてくる扉。そう、ダイニングとして使わせていたんですって!こんな部屋で食事・・・落ち着くのかな?どんな質素なものを食べても、なんかすごいもん食べてる気分になれそうです。➡ さらに動画をどうぞ

そして天井いっぱいに皿が埋め込まれた「スペイン皿の間」

「愛の部屋」、こ地らも白の装飾が信じられないほど繊細です。

そして、見学の最後は礼拝堂。洗礼盤もあったのですが、ここで一家の子孫が洗礼を受けたのでしょうか?侯爵はここで祈りを捧げたり、懺悔をしたのでしょうか?入った時の興奮は落ち着き、各部屋のすばらしさにただただ感動する一方、どうしてこれほどまでの作品が、こんな状態になるまで放置され、崩壊する危機に直面しなければならないのか?やるせなさ、はかなさの残る、特別見学でした。この城が「過去の伝説」になることなく、再び誰もがこの城と、この城にかけた1人の男性の生涯に触れられることを祈らずにはいられません。

見学できたのは城全体からするとほんの一部で、2016年に見学できた場所でもこのような破損があちらこちらに、見学不可の場所はもっとコンディションが悪かったそうです。今どうなってるか?考えただけでも胸が痛みます。皆さん、ぜひ投票してください!

サンメッザーノ城の歴史

おさらいも兼ねて、サンメッザーノ城の歴史概略です。

【ローマ時代についての最初の記述】ローマ時代の要塞跡に中世の城が作られた

【1000年~1600年】所有は貴族を転々とした後、メディチ家の手に

【1596年】トスカーナ大公メディチのフェルナンド1世がアラゴンのXimenes家に売却

【1816年】アラゴンのXimenes家の最後の末裔が死去、彼の甥っ子が引継ぎ、その後、彼の息子である フェルディナンド・パンチャティーキ侯爵へ引き継がれる

【1840-51年】フェルディナンド・パンチャティーキ侯爵は本などでオリエンタルな建築に感銘を受け、館を建て変える計画を立てる

1852-89年大方の改築工事を終え、ヨーロッパいちの折衷様式建築の最高傑作とも言われる 

1897年フェルディナンド・パンチャティーキ没。娘のマリアンナ、そして孫のフェルディナンド、マリアンナに引き継がれる

1940-45年】第二次世界大戦中はフィレンツェ軍や同盟国の軍隊の倉庫として使用される

1955年】サンメッザーノ有限会社に売却

【1973年】ホテル&レストランとして使用、重要な場所はそのまま結婚式などのイベントに使用される

1990年 ホテル&レストラン廃業

1992年Fratelli Catalani 有限会社へ、修復計画が出されるが、実施されず

1999年Sammezzano Castle 有限会社へ、必要最低限の補修

【2000年城は閉鎖され、放置される

2005年~城の地下にあった墓のライオン像などが盗まれ、次々と略奪にあう

2012年フェルディナンド・パンチャティーキ侯爵の生誕200年を前に現Comitato FPXAの前身が誕生

2013年Comitato FPXAによる「サンメッザーノと東洋の夢」イベント開催

2013-16年 Sammezzano Castle 有限会社に許可を取り、Comitato FPXAによる年に数回、1日につき定員800人の特別見学会開催し、その寄付でフェルディナンド・パンチャティーキ侯爵の墓を再建

【2015年】負債賠償のための競売対象に。外国人の手に渡ってリゾートホテル化される危機に面し、イタリア人の手で博物館として一般公開できるようSave Sammezzanoが発足し、募金活動を開始

【2017年】2016年度のI Luoghi del Cuoreで優勝、その前後にも政治家や文化人などを巻き込み保護を訴えるが、民間企業所有のため、賞金は凍結され補修計画も白紙に

【現在】度重なる競売も買い手が見つからないまま、再度I Luoghi del Cuoreへ立候補

Save Sammezzano サイトより抜粋

ギャラリー(クリックすると拡大します)
基本情報

Castello di Sammezzano
Via Giuseppe Garibaldi, 6, 50066 Leccio FI

アソシエーション
  1. Comitato FPXA 1813-2013
  2. Save Sammezzano

 

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