オリーブオイルとイタリア、特にトスカーナ、とりわけトスカーナの田舎生活とは切っても切れない関係にあります。「イタリア人にとってオリーブオイルとはどんなものですか?」とよく聞かれることがあるんですが、まずは「醤油のない和食のようなものでしょうか?ないと日々の料理が成り立ちません」と答えます。イタリアと言っても広く、北部はオリーブも生育できず以南よりは食にオリーブオイルを使わないですが、トスカーナ人は「オリーブオイル狂」と言っても過言でないくらい、オリーブオイルがないことはあり得ません。そして、田舎では、多くの家庭でオリーブオイルは「お店で買うもの」でなく「自分たちで作るもの」、あるいは友人やお気に入りの農家から直接買うもの、なのです。
おらが村のオリーブオイルの搾油所は、メーカーの自社専用の搾油施設でなく、こんなトスカーナ地元民が自身の畑で育て、収穫したオリーブを搾油してもらいにやってくる所。オーナーのニコーラのスケジュール帳には、●●さんの搾油が10時~、などとぎっちりと予定が入っています。オリーブの量によって搾油にかかる時間が変わるので、おおよその量を聞き、予約を入れていく・・・そうして、オリーブを運び、搾油して、TOP写真のおじいちゃんのように今年のマイ・オリーブオイルが出てくるのを見守る・・・ただオリーブオイルの生産工程を見たり、新オイルを味わうだけでなく、こういった「トスカーナ人の生活」を感じて頂けるのが、この搾油所の醍醐味だなぁ~と改めて思いました。そして、オッサン同士が(笑)「おまえんとこ何キロ?」「今年はハエが多かったよねぇ」「雨がやんだ水曜日に友人よんで一気に収穫したんだよー」など、今年のオリーブ、オリーブオイルのあれこれや、井戸端会議の様子も見られたり、時には参加したり!オリーブを入れているこのおじさんと奥さんは「あんた、日本でも有名人になるかもよ!」とたくさん写真を撮らせてくれました。
そして先日、グループのお客さんと訪問した時のこと・・・写真の真ん中に写っているおじさんが、私たちに「ねぇ、ちょっと話していい?」と言ってきたのです。
「ここのオーナーさんとうちのお父さんが友達だったこともあって、僕が小さい頃、搾油シーズンになるといつも、学校帰りにここに寄っていたんだ。そこの入り口にパンが置いてあってね、ストーブで焼いてね、それで容器に入れてある搾りたてのオイルにパンつけてね~、美味しい美味しいっておやつにしてたんだよ。今でも懐かしい思い出なんだなぁ~・・・あ、それだけ、言いたかっただけ!へへへ💛」おじさんが語る思い出が素敵すぎて、そしてそんなシーンを想像して何だかジ―――――ン・・・きっと、日本人の私たちにオリーブオイルや搾油所がいかにトスカーナ人の生活と結びついているか、教えたかったのでしょう・・・いやいや、そんな大層なことはなく、ただただ自分の古き良き思い出を語りたかっただけかもしれないけど(笑)。そんな一期一会の出会いができるのも、田舎ならではの体験です。
今年は搾油所の機器入れ替えや、オリーブ不作、収穫期の雨など、マイナス要素たくさんの年になってしまいましたが、11月いっぱいは月水金、基本的に搾油を行っています。フィレンツェから1時間で来られるので、フィレンツェ滞在中の方は、ぜひトスカーナの田舎生活と秋の風物詩、そしてオッサンの中でオリーブに触れて、出来立てのオイルを味わいに来てくださいね.
愛すべき、美しい30の村
飾らない、ありのままのイタリアへ!人口や景観など、「イタリアの最も美しい村」協会が設けた厳しい基準を満たした村だけが加盟を認められる「イタリアの最も美しい村」。その中から、イタリア在住20年以上、トスカーナ州の田舎町に暮らす著者が、“忘れられない”30の村をセレクト。古きよきものが息づく小さな村の魅力を、旅先での出会いやエピソードをちりばめながら綴る。
本の詳細はこちら
「フィレンツェから日帰りで行ける!トスカーナの小さな村10選」
「トスカーナのおうちごはん春夏編20レシピ」
「コロナ・ロックダウン緩和直後のイタリア・フィレンツェ記録写真集(モノクロ版)」
「コロナ・ロックダウン緩和直後のイタリア・フィレンツェ記録写真集(カラー版)」
「トスカーナのおうちごはん秋冬編20レシピ」
いずれも読み放題に入っています!
