アレッツォ県北東のサンセポルクロで、ピエロ・デッラ・フランチェスカと並んで有名なもの、それは薬草を使用した製品メーカーABOCA(アボカ)。旧市街にはミュージアムがあり、薬草やかつての製造方法、薬壺やガラス容器の展示などを行っています。ミュージアムのある建物は、製品のパッケージにもなっている1500年代建設のボルボン・デル・モンテのお屋敷で、修復ののち、2002年にABOCAミュージアムとしてオープンしました。
ミュージアムは2階、階段の左右の壁には、ドイツの植物学者・薬剤師であるベスラーやフランスの医師・自然学者の Pierre J.Buchoz など、同社のコレクション作品が一定の期間で入れ替わりで展示されています。
一番目の部屋は、照明や絵画もエレガントな乳鉢の間。芸術作品としても美しい乳鉢たちにうっとりしてしまいます。
乳鉢は1300年頃まではシンプルなものでしたが、1400年頃から幾何学や宗教的なモチーフが用いられるようになり、さらに1500年頃からは動物・植物など様々なテーマで芸術的な側面が強くなっていったのだそう。素材の大半は銅か石ですが、アラバスターや木を使用したもののも展示されています。
乳鉢の部屋のお隣は1800年代の薬局を再現した間。こちらも1800年代のそのままの松製の家具、レトロなボトルにうっとり・・・
部屋の3方を囲む戸棚の中は、全て当時のオリジナル。ガラス製の小瓶や壺、陶器、木製の箱など・・・戸棚の上には本物のワニや亀の剥製があり、2次的利用とはいえ、動物が医薬に使われていたことを証明しています。
そして薬草好きの方、絵画が好きな方が卒倒しそうになるのが、歴史の部屋。薬草が使用され始めた原始時代からの歴史を紐解く解説パネルとともに、中世以降の薬草図鑑のコレクションがガラスケースに展示されているのです。その精巧な描写に、ただただ目を奪われます。
陶器の間では、ルネサンス期からの芸術的発展と、薬草を保存する機能的発展が融合した作品たちが。トスカーナを始めとしたイタリア中部の作品が展示のメインとなっています。そのお隣は、ガラスの間。ガラスは古代エジプトから使用され、イタリアではヴェネツィアを中心に中世より芸術的ガラスが作られてきました。ここに展示されているものは医薬に関連するものですが、手作業でつくられた渦巻き装飾など芸術的価値も高い1700年代の作品は、入口右に展示されています。
植物化学の間は、まさに実験室のよう。
そして、かつての自然薬を作る工房を再現した間や
そして薬草の間。天井からいろんな種類のドライ植物が吊り下げられていますが、ラベンダーやカモミールなどは今でもお馴染みのもの~昔から利用されていたんですね。薬草を収穫する器具や保管する箱なども展示されています。
他にも量りの間や図書室もあり、そこは研究・調査センターにもなっているので、書籍などを閲覧することもできるそうです。
じっくり見学すると2時間くらい、いや、薬草やホメオパシーに興味がある方はもっとかも?その他、昔の調度品や器具などが好きな方、絵画などの定番美術鑑賞に飽きた方にはぜひおススメしたいミュージアムです!
サイトの動画コーナーは、時間も忘れて見入ってしまう動画がいっぱいです。
ギャラリー(クリックすると拡大します)
基本情報
ABOCA MUSEUM
via Niccolò Aggiunti 75, 52037 Sansepolcro (AR)
Tel : +39-0575-733589
毎日開館、9:00~13:00&14:30~18:00