カポリーヴェリ「カラミータ」、エルバ島唯一の地中鉱物採掘場

現在のエルバ島の産業の80%は、観光業です。しかしそれはほんとに近年のことで、エルバ島は古から鉱物や石の産地として知られていました。魚の形をしたエルバ島、頭の形の西側の主な採掘物は御影石、そして尻尾の形の東側は鉄。エトルリア時代からローマ時代、そして中世、地中海の要所であると同時に豊かな資源を持つエルバ島は、ピサやフィレンツェ、スペイン、フランスと様々な国に統治されてきました。近代に作られた採掘場はリオとカポリーヴェリ、特にカポリーヴェリは唯一の地中の採掘場で、当時のヨーロッパでは最新テクノロジーを屈指した採掘場でした。いずれも現在は、採掘場ミュージアムとなっており、私たちはカポリーヴェリのガイドツアーに参加してきました。

カポリーヴェリと言っても、採掘場は町より7キロ。粗野なオフロードの先にミュージアムとブックショップがあります。ツアーはここからスタートし、係員の指示に従ってガイドの車の後に続き、さらにオフロードを東へ約6キロ・・・20分ほど行くと、海をバックに「ジネーヴロトンネル」採掘場の施設が見えてきます。ここにたどり着く前の車道、そしてこの採掘場入口にも厳重な施錠があるのは、このエリアは国の保有。地元の機関が管理を委託され、ミュージアム運営やこのようなガイドツアーを催行しているのです。

この日は15名の2グループで約30人。配られたヘルメットを被ってスタートです。1900年代はじめの調査で、このエリアはエルバ島の他のエリアよりも鉄の配分が多い優良な巨大な磁鉄があることが分かり、1930年代からは地上での採掘作業が行われていました。そして1960年代に地中トンネルを開ける作業が始まります。実際の採掘までに1日1m、固い地質を爆弾で爆発させて少しづつ前に進むという気が遠くなる工事・・・それもこの中に、とてつもない資源が眠っているのが明らかだったからできたことです。

作業員は3年学校で学んだ専門家ですが、当時一番近い集落からこここまで6キロを徒歩か自転車で往復し、8時間を闇の中で作業するという想像を絶する肉体労働。しかも給料は採れた量の歩合だったそうです。自分のヘルメットの電灯だけ、過酷な条件の労働環境ですが、死亡事故が起きたのは本人が原因の人為事故が1度だけだったとか。太陽もない、風もない、雑音もない、見えるのは目の前の石の壁だけ、という環境が逆に集中力を高めていたそうです。

トンネルの中に作られた空間は、なんと食事部屋。こんな薄暗い中で、食事の時くらい外に出ればいいのに!・・・と思いますよね?家から歩いてきた距離から比べると、トンネル入り口なぞ数分で行ける距離なのですが、敢えて出ない理由があるそうです。小さい子供もいる中、こんな風にクイズ風にしてすすめていくガイドさん、上手!知識もさながら、生き生きと参加者を引き付けていく話術、そして熱意がヒシヒシでちょっと感動しました。

そんなガイドさんが左にぼんやり映っていますが(笑)。私たちが歩いたのは3層にもなっているトンネルの一番高い部分で海抜6メートル。その下は海底24メートル、54メートルと続きます。そしてその3つを突き抜ける大きな縦のトンネルがあり、大きな塊が粉砕されてから約4トンの鉱物がエレベーターで運ばれていく仕組み。そこから鉄分が多い部分とそうでない部分に仕分けられ、ピオンビーノ、ターラント、バニョーリ、ジェンノヴァの鋳鉄所に船で運ばれて行ったそうです。

ここには大きな採掘空間が2つあり、1つは地上にまで穴が開いています。そのため、雛を外敵から守るため、カモメが巣を作っていました!この採掘空間、もうどう表現していいか分からない、ファンタジーの空間、いや、スターウォーズの一シーンに出てきそうな空間で、鳥肌が立ちました。ギャラリーに1枚掲載(地上まで穴が開いている方)していますので、ぜひご覧下さいね。

これほどまでに大規模で最新だった採掘所がどうして1981年に閉鎖になったのか・・・それは堀つくしたからでもなく、採掘工がいなくなったからでもなく、安い工賃で採掘できる南米や南アフリカに市場が移ってしまったから。この閉鎖に採掘工たちは戸惑い、抗議し、いつかまた再開するかもしれないという希望をもっていたそうですが、それは現実に起こりませんでした。1960年代から観光ブームが始まり、この採掘所の閉鎖を機に、エルバ島は鉱物の島から観光の島へと完全にシフトしたのです。「兵どもが夢の跡」・・・今も足元に転がる磁鉄をお土産にもらい、そんな言葉が頭に浮かんだのでした。

その後、各自でチケット売場に戻ります。ここは小さなミュージアムとなっており、採掘した鉱物や、当時の採掘機材、看板などが展示されています。当時の採掘工の話などの動画も上映されていますので、時間がある方はぜひ。

そしてこれは採掘場とは直接関係ないのですが・・・ミュージアムから採掘場に行く間にある建物。なんと、ワイン農家直営のエノテカ!荒涼な風景がある中に、ブドウ畑があるエリアがあって???と思っていたら、ここにワイン農家があったのです。車窓から見て思い出したのは、以前に建築系ウェブマガジンに寄稿した「トスカーナ・デザイナーズワイナリー」=有名建築家が設計したワイナリーの1つ・リパルテでした。

著名建築家が設計!景観やエコにも配慮したデザイナーズ・ワイナリー

見学&テイスティングも行っているようですので、ワイン好きの方は採掘場ツアーの帰りに行ってみて下さいね(リパルテの英語サイトはこちら

ギャラリー(クリックすると拡大します)
基本情報

カポリーヴェリ採掘場・カラミータ(Le miniere di Capoliveri CALAMITA)
Località Calamita, Capoliveri
Tel : +39-0565-935492

6月中旬~10月中旬まで。
2020年の場合は、ですが、ミュージアムは10:00-15:00、各ツアーコースは10:30、11:30、12:30の3回で、時期によって変動あり。10名以上集まれば時期・時間外でもツアー催行可能。

コース1:1000m、万人が参加可能な平たんな道。所要時間50分。
コース2:懐中電灯を持って歩くアップダウンありのコース1000m、12歳以上のみ参加。所要時間50分。

詳しくはこちらのページをご覧ください(イタリア語ですが、表などは英語表記あり)

【AMAZON KINDLEより、4冊の電子書籍を発行】

「フィレンツェから日帰りで行ける!トスカーナの小さな村10選」
「トスカーナのおうちごはん 春夏編20レシピ」
「コロナ・ロックダウン緩和直後のイタリア・フィレンツェ記録写真集(モノクロ版)」
「コロナ・ロックダウン緩和直後のイタリア・フィレンツェ記録写真集(カラー版)」

いずれも読み放題に入っています!

関連記事

  1. 圧巻の360度大理石!カッラーラの採石場見学「マルモツアー」

  2. 【ガイドにないフィレンツェの教会】サンタ・マリア・マッジョーレ教会

  3. 崩壊した要塞が絶景ポイント!カンピリア・マリッティマ

  4. 久々のスタジアム観戦「フィオレンティーナVSガラタサライ」

  5. アレッツォ県北部、ロマネスク様式の傑作「サン・ピエトロ・ア・ロメーナ教会」

  6. フィレンツェの無料で見られる「最後の晩餐」~ペルジーノ作、フリーニョ編

  1. イタリアでは、「カスタマイズ」が当たり前

    2021.07.23

  2. 【かもめの本棚】イタリアの美しい村の連載・第3回目が公開となりま…

    2021.07.22

  3. EURO2020で再認識「イタリアはやっぱりマンマの国である」

    2021.07.21

  4. マルケ州トッレ・ディ・パルメ、海岸線を見下ろす「イタリアの美し…

    2021.07.20

  5. 電気自転車でどこまでも行こう!コーネロ山・E-BIKEツアー

    2021.07.19

  1. 通訳アテンド同行で安心!電車&バスで行くワンディトリップ

    2018.03.19

  2. トスカーナ北部ロンダで「自然農法」農家視察研修プログラム

    2019.10.17

  3. 食材ほとんどが自家製!フィレンツェ北部の田舎でマンマの料理レッ…

    2018.02.01

  4. 電子書籍「トスカーナのおうちごはん秋冬編20レシピ」発売

    2020.12.12

  5. フィレンツェ北部・ ロンダ「休暇の家」で、気軽に本物の田舎体験!

    2018.01.29

Copyrighted Image