フィレンツェより北東に20キロちょい、おらが村の隣町・ルフィナ。ワイン好きの方なら、この名前には聞き覚えがあるんではないでしょうか?そう、キアンティゾーン最北の銘柄「キアンティ・ルフィナ」の中心地です。フィレンツェのベッドタウン的な小さな町ですが、町の少し高台にある「ワイン博物館」では、中世からのワイン生産の伝統を伝えています。駅から下りて左斜め前にある大きな門、そこから長い糸杉の並木道を上っていく先が、「Poggio Reale=王の高台」と呼ばれるヴィッラで、優雅な曲線の階段が特徴的な1500年代建設の建物です。1829年代にトスカーナ大公レオパルド2世が滞在したことが由来だとか。
並木道を上っていく右側は、今も続くワイン製造のためのブドウ畑が。訪問したのが9月末だったので、収穫をまつブドウがたわわに実っていました。
訪問時はキアンティ・ルフィナの祭り「BACCO」開催中で、ヴィッラの中や地上階のエノテカには入れませんでしたが、周辺や裏側のテラスには市民が散歩する雰囲気。ヴィッラの隣の建物は「キアンティ・ルフィナワイン生産者協会本部」になっており、祭りでは、キアンティ・ルフィナの生産者のスタンドが並びます。裏のテラスから見るルフィナの町は、こんな感じ~祭りの中心はこのヴィッラと、鐘楼が見えている教会のある広場になります。
ワイン博物館は、元々ヴィッラの地下にあったセラーにあります。ヴィッラ正面・階段の間にあるエノテカからも入れますし、ヴィッラ向かって左側の小道を迂回すると、博物館のメイン玄関に出ます。入場は無料、カウンターでボランティアの方からパンフレットももらえます(イタリア語・英語)。
エントランスの右には、かつてのブドウの葉や冊子、ヴィンテージもののこの地のワインがずらりと並んでいます。
今ではイタリアを代表するワイナリーの1つ、フレスコバルディ。トスカーナに7つあるワイナリーのうちの3つ、ポミーノ、ニポッツァーノ、レモレがこのゾーンに集中しています(フレスコバルディのモンタルチーノのLUCEワイナリーについてはこちら、マレンマのデザイナイーズワイナリーついてはこちらで紹介しています)。
中は大きく分けて2つのホールに分かれています。1つ目のホールの左側の壁には、サンジョヴェ―ゼを杯目とする様々なブドウの品種の解説ファイル、中心には手作業で行っていた時代の器具などが展示されています。
この地のワイン生産は中世から知られてましたが、1716年にはトスカーナ大公・メディチ家のコジモ3世の布告により、他3地域と共にワイン生産地区として指定されたのです。これはフランスよりオ203年も早い、世界で初めてのワイン生産地に関する法令だそう。
2つ目のホールの真ん中には、トスカーナワインのシンボルともいえる藁を巻いた「フィアスコ」が並びます。1900年代には近郊のポンタッシエーヴェでフィアスコの工場ができ、地元の女性が湿地に生える草を使って巻く作業をしていたそう~ワインそのものだけでなく、こうして付随する製品の産業も盛んになってくる様子が分かります。またフィアスコの棚の手前には、樽やモスト(ブドウの搾り汁)と組みだすポンプなど、ワイン醸造に係わるかつてのマテリアルや機械の展示や、その生産工程などを説明する写真パネルが展示されています。今の機会は全て電気式に変わり、その醸造方法も時代と共に革新されていきますが、ここにたどり着くまでの先人たちの知恵や労力を知るのは、とても興味深いことですね。
そして博物館最大の展示物は、この大きな山車!このような山車で、この地域の生産者がかつてフィレンツェに納品していたんです。現在でもこの伝統は9月最終週のワイン祭り「BACCO」で再現され、土曜日の昼にはこの「CARROMATTO」がシニョーリア広場にお目見えします。長さは約8m、2リットル入りのフィアスコが11段で合計2800本!これを積み上げるには15人もの男性が必要だったとか・・・当然ながら現在これができる人はたった数人だそうです。
1つ目のホールからエノテカに上がるスロープには、かつでの新聞記事やポスターなどが展示されています。実際にこのワイン山積みの山車が運搬に使われていた記事も・・・なんと1828年!こんな風に昔から、このワインは各地で需要があったのですね。
残念ながら、この博物館は週に4~2日しか開館していません。わざわざこの博物館のためだけに来るほどの規模ではないのですが、開館日時にあうようであれば、おらが村やキアンティルフィナのワイナリーに来られる際にでも、ぜひ立ち寄ってみて下さい。キアンティルフィナの町の、ワインの、産業の歴史が身近に感じられますよ。
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基本情報
ワイン博物館(Museo della vite e del vino)
Viale Duca della Vittoria 7, Rufina
Tel : +39-055-8396533(市役所文化部)、+39‐345-2216361(ガイド)
月~水は閉館
10月1日~3月30日は木~日・8:30-12:30
4月1日~9月30日は木&金・14:30-19:00、土&日・8:30-12:30
上記以外のアポも相談可能