時間つぶしにフィレンツェ圏カードを使ってヴェッキオ宮殿を訪れた際、ちょうど行われていた展示会「Le più strane e belle invenzioni del mondo(世界で最も奇妙で美しき発明)」。ジョヴァンニ・ストラダーノという芸術家の生誕500周年記念の展示会だったのですが、この芸術家の名前は初めて聞きました。さて、このジョヴァンニ・ストラダーノとはどんな人なのでしょう・・・?
奇しくも展示会のスタートは500人広間。ジョヴァンニ・ストラダーノは実はイタリア語名で、本名はヤン・ファン・デル・ストラート、ストラダヌスの通称を持つベルギー出身の画家です。20代後半の1550年ごろから欧州各国で仕事をするようになり、リヨン、ヴェネツィアを経てフィレンツェへ。「芸術家列伝」でも有名な芸術家、ジョルジョ・ヴァザーリが中心となって進めていたトスカーナ大公コジモ1世の事業に参加するようになります。ヴァザーリ曰く、ストラダーノは「線画が上手く、素晴らしい奇想、多くの発明と彩色上手」で、この500人の間にあるヴァザーリ作の「カッシアの戦い」も彼の手が入っているそう。
ヴェッキオ宮殿では他にもメディチ家の居住室、エレオノーラ・ディ・トレドの間やフランチェスコ1世の書斎などの装飾も手掛けていますが、展示会は500人の間を含め、博物館のルート内の6室に別れて展示。織物のための下絵、特に動物の描写に優れていたそうで、展示会でも2つの大きな織物の展示がありました。このように名を知られる芸術作品の最終形と元となる素描を合わせて展示することで、作品の裏にどれだけの準備があり、どれだけの人が関わっているのかを知ることができると同時に、その壮大な事業を推し進めたコジモ1世の当時の凄さを思い知ることができます。
全部で80作品にも及ぶこの展覧会では、ウフィッツィ美術館やバルジェッロ博物館などフィレンツェからだけでなく、パリのルーブル美術館など世界からも貸し出しを受けての開催。板絵から線画、織物や印刷物など、バラエティに富んでいます。肖像画、風景画、素描などなど多彩な才能を持つストラダーノは、1563年にコジモ1世により設立された素描アカデミーでも教鞭を執っていたそう。
展示会の最後は百合の間。ここではストラダーノが人生後半に情熱をかけた、科学や地図向けの銅板印刷を集めています。そこにはアメリア新大陸を発見したコロンブスやアメリゴ・ヴェスプッチの銅板画があり、その隣に地図の間があるのは偶然ではないはず・・・
残念ながら、この展示会は2024年2月18日に終了しました。ヴェッキオ宮殿を訪れることがあれば、現代では表にはなかなか出ることが少ないもう1人の天才を思い出してみてください。
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愛すべき、美しい30の村
飾らない、ありのままのイタリアへ!人口や景観など、「イタリアの最も美しい村」協会が設けた厳しい基準を満たした村だけが加盟を認められる「イタリアの最も美しい村」。その中から、イタリア在住20年以上、トスカーナ州の田舎町に暮らす著者が、“忘れられない”30の村をセレクト。古きよきものが息づく小さな村の魅力を、旅先での出会いやエピソードをちりばめながら綴る。
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