フィレンツェのメインストリート、ドゥオモとシニョーリア広場を結ぶカルツァイウォーリ通り半ばにある四角い建物。カルツァイウォーリ通り側の1階は各ミュージアムなどのチケットカウンターになっていますが、この建物中への入り口は、裏側にあります。元々は8世紀半ばに建てられた、大きな菜園を持つ修道院 San Michele in Ortoから、後に現在のオルサンミケーレという呼び名に。この教会は1240年に取り壊された後には小麦市場となり、1290年にはアルノルフォ・ディ・カンビオ設計のロッジアが完成しますが、その後、火災とペストの流行により小麦市場は移転、ロッジアは壁で閉じられて現在の形になりました。1階は様々な人からの寄付により教会になり、更に1400年代にはフィレンツェに存在する職業組合の保護聖人の建設が認められ、1400-1500年代を代表する彫刻家たちの像で飾られるのです。現在、外にあるのは全てコピーで、オリジナルは建物2階にあるミュージアムに展示されています(ドナテッロの聖ジョルジョ、ジャンボローニャの聖ルカはバルジェッロ博物館)。
さて、教会の中に入ってみましょう。薄暗い中に美しく浮かび上がるのが、オルカーニャの祭壇。フィレンツェのゴシック様式芸術最高峰とされ、中にはベルナルド・タッディ作の聖母子像が。見逃しがちなのが、この祭壇の裏側で、教会からではなくカルツァイウォーリ通りの狭い入り口(奥は各ミュージアムのチケット販売カウンター)から見られます。この作品が見られるようになったのは、2018年の12月から、まさにそのために、チケット販売カウンターが移動したほどの素晴らしいもの・・・。
目の前に立った瞬間に、「おおおっ」と思わず口からもれてしまうほどの迫力。テーマは聖母マリアの死と被昇天で、上下ともにたくさんの人物や天使が覆いかぶさるように表現されています。そして、聖母マリアの棺の下には、祭壇が完成した年=1359年とオルカーニャのサインが彫り込まれています。
祭壇裏側はチケット販売カウンターが開いている時間は見られるので後でもOK、1階の教会鑑賞が終わったら、狭い石の階段をぐるぐる回って2階へ。
2階は、1階外側4辺に設置されていた各同業者組合の保護聖人の像です。このように、4辺それぞれの通りの名前、並びもそのまま上に上がった形に展示されているので分かりやすいですね。バルジェッロ博物館にある2体を除く12体はここに展示されていますが、2020年1月現在はドナテッロ作・聖マルコが修復中、ヴェロッキオ作・聖トンマーゾの不信が「ヴェロッキオ、レオナルドの師匠」展の世界巡業へ貸し出しになっています。これらの合計14体は、年代も1399年~1602年と幅広く、素材もブロンズと白大理石のミックス(依頼した職業組合の予算の関係?)ですが、ギルランダイオ、ドナテッロ、ヴェロッキオ、ブルネッレスキなど、1400年代フィレンツェの名だたる彫刻家のオンパレード!本当に見ごたえがあります。
そして後からつけられた螺旋階段を上がっていくと、それらが上からも見られるのが嬉しい。なんてったって像はいずれも2mを超える大物ですから、普通だと下からしか見上げられませんからね。壁に囲まれているのが、現在修復中のドナテッロ作・聖マルコは下では窓から体の部分しか見られませんが、階段からは頭の部分が見られます。そして階段を上って3階へ行くと、広い空間に、大きな2連窓。そこから、フィレンツェの街並みが見られます。
北にはドゥオモ、東は遠くにサンタ・クローチェ教会、南はヴェッキオ宮殿、西はレプッブリカ広場。見下ろすほどの高さではないのですが、逆にひしめきあう建物の様子や、歴史的建物の装飾やテラスなんかも間近で見られて面白いです。ベンチもあるので、こんなパノラマを見ながら一休みも良いですね。ここは時に、イベントなどで使われることもあります~実は15年前、私が某記者発表会で同時通訳デビューをした場所・・・同時通訳はこれが最初で現在まで唯一の経験だったので、当時を思い出してちょっと胸が熱くなりました。
動画も撮ってみました!
出口は来た階段でなく、通路を渡って隣の古の羊毛組合・現在のイタリアダンテ協会の中から。中には昔のフィレンツェ各地区の紋章などもあり、ミュージアムでなくても歴史を感じる場所があふれていることを実感させられます。また、オルサンミケーレ1階と2階にある彩色テラコッタは、かのロッビア工房のもの。オリジナルがある像はコピーですが、壁付け祭壇などの装飾も見事ですので、外側からもじっくり眺めて下さいね。
ギャラリー(クリックすると拡大します)
基本情報
Chiesa e Museo di Orsanmichele
Via dell’Arte della Lana, Firenze
Tel : +39-055-0649450
大人4ユーロ、18~25歳まで2ユーロ
※2023年9月23日まで修復などのためにクローズ
愛すべき、美しい30の村
飾らない、ありのままのイタリアへ!人口や景観など、「イタリアの最も美しい村」協会が設けた厳しい基準を満たした村だけが加盟を認められる「イタリアの最も美しい村」。その中から、イタリア在住20年以上、トスカーナ州の田舎町に暮らす著者が、“忘れられない”30の村をセレクト。古きよきものが息づく小さな村の魅力を、旅先での出会いやエピソードをちりばめながら綴る。
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「トスカーナのおうちごはん春夏編20レシピ」
「コロナ・ロックダウン緩和直後のイタリア・フィレンツェ記録写真集(モノクロ版)」
「コロナ・ロックダウン緩和直後のイタリア・フィレンツェ記録写真集(カラー版)」
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