「ユリウス2世の霊廟・モーゼ像」は、ローマのミケランジェロ彫刻のもう1つの傑作!

ルネサンス期の芸術家として、あまりにも有名なミケランジェロ。そのほとんどの作品がフィレンツェ、そしてローマに残っています。代表的なものは、やはりシスティーナ礼拝堂の「天地創造」「最後の審判」の2つのフレスコ画、そしてサン・ピエトロ寺院にある彫刻「ピエタ」ですね。しかし、それらに比べればあまり知られていない、ミケランジェロのもう1つの傑作がコロッセオの近くに隠れています。それは、「サン・ピエトロ・イン・ヴィンコリ教会」にある、「ユリウス2世の墓」です。ユリウス2世(在位1503~1513年)と言えば、その政治外交の活発さと、ルネサンス期絶頂時代に芸術保護を行い、サン・ピエトロ寺院の修築に着手したことで有名。そんな彼が、1505年(つまり法王就任から2年後の存命中)にミケランジェロに依頼したのが、この霊廟ですが、完成したのはユリウス2世が亡くなった後、しかもずーーっと後の1545年!霊廟の大理石選びをしてる間に、先にシスティーナ礼拝堂のフレスコ画を依頼されたり、紆余曲折を経て完成させた大作なのです。

さて教会ですが、カブール駅・テルミニ駅からカブール通りを通ってくる方は、グーグルマップの指示通りでなく、写真上のぼるジア階段を上った方が早く行けます(ただし、アーチ付近に浮浪者さんがいることも多いです)。ツタが這い、花が咲き乱れる雰囲気もとても素敵。この階段を上り切った先の広場、左側にあるのがサン・ピエトロ・イン・ヴィンコリ教会です。

ぱっと見、教会でなく何か館のような正面ですが、入ったら、質素ながらも荘厳な雰囲気に圧倒されるでしょう。教会は5世紀にすでに完成していましたが、幾度となく改修が行われました。大きな改修は780年、1471年、そしてユリウス2世による1503年になります。

質素、と書きましたが、ご覧のように大理石造りの立派な教会。他のローマの教会が豪華すぎて、こんな感じが質素に見えてしまいますね(笑)。お目当てのユリウス2世の霊廟は、3身廊の右側奥にあります。

17年前に見た時は、霊廟すぐそばの柵まで入れたのですが、今回は更に手前にロープが張られ、この距離からでしか見られなかったのが残念です。とはいえ、ここから見るだけでも壮大な作品・・・と思いきや、本来はこれの何倍もの規模だったそう。現在は7体の像で構成されていますが、当初ななんと、40体をも擁する計画だったそうです。

全体は3層になっています。一番上の層、中央にあるのは、ユリウス2世の紋章、そして左右に2本ずつの蝋燭台が。

その下、真ん中の層の中央には、聖母子像とその足元に横たわるユリウス2世。なんだかちょっと官能的!ユリウス2世の左には巫女、右には預言者の象が配置。

そして一番の存在感は、やはり一番下中央のモーゼ像。遠くからだと分かりにくいですが、高さは2m越えの迫力で、肉体やドレープの緻密さで、ミケランジェロ作品と一目で分かります。ああ、前のように近くで舐めるように見たかった・・・。モーゼ像の両脇には、救済と永久の生、たどりつく2つの道へ必要なもの:左は観想的アレゴリーとしてラケル(ヤコブ2人目の妻であり、リアの妹)が、右は活動的アレゴリーとしてリアの像(ヤコブ1人目の妻であり、ラケルの姉)が配置されています。

現在、ユリウス2世はサン・ピエトロ寺院の歴代法王の墓に眠っています。しかし、何事にも精力的で圧倒的だったユリウス2世と、当時一斉を風靡した一大芸術家ながら頑固だったミケランジェロとの関係を想像し、当時のローマの、イタリアの様子を感じることができます。私が行った時はコロナ後で観光客がほとんどいなかったので貸し切りでしたが、通常でも訪れる人は少ない穴場。ミケランジェロファンの人はもちろん必見ですが、そうでない方も、ルネサンスの傑作の1つをぜひ!鑑賞して下さい。

基本情報

地下鉄B線カブール駅から徒歩3分、コロッセオから7分。テルミニ駅からでも徒歩15分程度です。

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