チェルヴィア塩田、夕暮れサイクリング・ツアー

3方を海に囲まれたイタリア半島には10近くの塩田が存在しますが、今でも継続的な生産を続けているのは下記の4つ。

  1. マルゲリータ・ディ・サヴォイア(プーリア州)イタリア最大!
  2. トラーパニ(シチリア州)
  3. サンタンティ―コロ(サルデーニア州)
  4. チェルヴィア(エミリア・ロマーニャ州)

私たちが2022年の夏に行ってきたのが、4番目のチェルヴィア。ちょうど近郊のチェゼナ―ティコのキャンプ場に1週間滞在していたからですが、日本の方が行かれる場合でもボローニャから直通電車があるのでとても便利です。ゆるりと健康的な食生活に替えている我が家では、塩も精製塩でなく天然塩。近郊のスーパーでは取り扱いがないので食べたことはなかったのですが、チェルヴィアの塩のことは知っていたため、個人的にも見学はもちろん、購入するのも楽しみにしていました。

上記の4つの塩田を見て頂くと分かるように、南部の3つと違い、チェルヴィアは一番北、ヴェネト州とエミリア・ロマーニャ州にまたがる「ポー川デルタ地帯州立公園」の中にあります。敷地内にはミュージアムとビジターセンターがあり、塩の販売や各種ツアーを行っています。数々のツアーの中から、私たちが選んだのは夕暮れ自転車ツアー。海で遊びたい男児の時間を奪うことも少なく、自転車というアクティビティあり、そして夕焼けという絶景も楽しめるから。他にも徒歩やボートのツアーなど各種あります。

7月の夕暮れツアーの集合は18時。事前に参加者の身長を伝えているので、相応の自転車を準備してくれていますが、まずはサドルなどの調整を行います。参加者の準備が整うと、ガイドさんを先頭に出発! 塩田の中のあぜ道を走り、各ポイントで説明を受けます。

チェルヴィアの塩田の歴史は古く、古代ローマ時代にまで遡ります。ヴェネツィア共和国支配下で最盛期を迎え、残っている刻印はなんと1274年もの。この塩田で生まれた塩はチェルヴィアからヴェネツィアへ、そして海洋交易で世界にも運ばれたのでした。そして1440年から始まったローマ教皇への塩の華の奉納は、今も続く大切な伝統でもあります。面白いのは20世紀前半まではチェルヴィアの各家庭が代々に伝わる小さな区画で塩づくりをしていたこと。それらの小さな144区画を整備し、現在は大小合わせて80に区画。周りを囲む支流から海水を取り込みます。ここでは窯などを使わずに太陽や風による自然蒸発だけため、その収穫は8月の半ばから始まるそう。

チェルヴィアの塩は、苦みのあるマグネシウムなどの成分は少なく、ヨウ素や亜鉛、鉄分を多く含むのが特徴。ドルチェ=甘い、と称されるのは、ツンとした塩気でなく、そのまろやかさを表しています。かつて塩は食品保存のために必要で大変高価だったのですが(写真はかつての見張り小屋)、冷蔵庫の発明や工場生産の塩の登場により、チェルヴィアの塩はその絶対的な役割を終えることとなりました。

しかし今もなお塩をつくり続けるのは、何千年ものこの伝統を守ることと、塩田エリアに育まれてきた生態系を保持するため。遠くに降り立つのは希少な野生のフラミンゴ、そして天敵がいないことから塩の上に休息に来る、かもめの大群は圧巻でした。

ツアーも後半を迎えると、こんな風にゆっくりと空の色が変わってきます。下の写真は収穫期に塩を運ぶトロッコ列車。

最後は昨年の塩山。そばにいる親子との対比で、塩山の大きさが分かっていただけると思います。

そして最後のサプライズはこの植物。サリコルニア、または海のアスパラガスという名前で呼ばれているこの植物は、4月~6月にチェルヴィアの塩田付近だけに生えているそう。食べて見ると、なんと! 塩の味!! これを摘んでみじんきりにして、ビジターセンターの売店で販売もしています。

ショップではその他、塩はもちろん料理用途に合わせたハーブ塩や、石鹸やバスソルトなど、様々な生産品の販売がされています。意外だったのは、現在の塩田の活動は塩を売るためではなく、活動をやめないことで長年かけて形成されたこの地の生態系を維持すること。塩などの成員販売と見学ツアーの収益で、こうして塩田の活動、つまり生態系も維持できているそうです。

たかが塩、されど塩・・・天然塩の良さだけではなく、何千年も続く塩田の歴史と現在の活動の理由を知ると、お土産に持ち帰ったチェルヴィアの塩はいっそう美味しく、味わい深く感じるのでした。

ヴェネト州から中部のアドリア海沿いを旅行する方はぜひ!

ギャラリー(クリックすると拡大します)
基本情報

チェルヴィア塩田ビジターセンター
Via Bova 61, Cervia
Tel : +39-0544-973040

※例年4月1日~11月1日まで開園
※塩田見学は完全予約制のツアーのみ

【行き方】
チェルヴィア駅はボローニャから直通電車で1時間30分。駅からビジターセンターは徒歩15分。
電車の乗り方などについては、下の記事を参照ください。

電車を乗りこなそう! Trenitalia 編

【見学ツアー】
時期によりツアーの種類が変わりますが、下記のツアー(例)があります。価格は8ユーロ~、徒歩、自転車、ボート、食事つきなどいろんなタイプがあるので、ご興味や時間、予算などで選んでください。ツアー紹介ページはこちら(イタリア語のみ、随時更新されます)

  • 夕焼け自転車ツアー
  • フラミンゴ探しボートツアー
  • ブランチ付き塩田自転車ツアー
  • 夕焼けボートツアー
  • 鳥の巣探し散策

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