世界遺産・ラヴェンナでモザイクに酔いしれる

エミリア・ロマーニャ州の北東、アドリア海から10Kmほど内陸に入った都市・ラヴェンナ。ビザンチン時代のモザイクが今も完璧な形で保存され、その8つが世界遺産(1996年)となっていることでも世界的に有名です。長年行ってみたかったこの町を実際に訪れた感想は、本当に本当に、すごい!!

どうしてこの地にこれだけのモザイク作品が残されたのか、やはり歴史を紐解く必要があります。
ラヴェンナとその周辺は、3000年以上前から人が住み、また海とたくさんの潟に囲まれていて敵にも侵入されにくいことからローマ帝国の重要地となり、1世紀には東方帝国からの防御のため大きな軍港が建設されました。そして402年には西ローマ帝国の首都となり、多くの建造物やモニュメントが建設されたのです。西ローマ帝国が滅亡すると東ゴート王国の首都となったのち、540年には東ローマ帝国政のラヴェンナ総督府がおかれ、その頃に建設されたのがこれらのモザイクの教会群です。その世紀末から衰退がはじまり、その後は特に重要な都市として扱われなかったことから、これらの教会群がそのまま残ったと言われています。

モザイク以外にも見るところはありますが、まずは世界遺産の8つの史跡を見ていきましょう。

共通チケットに含まれる5つの史跡

私たちが訪問した2022年夏は史跡3つと5つの2種類の共通チケットがありましたが、現在は5つ(10.50ユーロ)しかないようです。これだけのものが見られて10.50ユーロは安い! 問題は時間ですが、有効期限は7日間。共通チケットにない他のモザイクの教会や他の見どころを入れると、1泊2日にしても時間が余ることはないと思います。

さて、共通チケットに含まれる5つの史跡ですが

  1. 聖アンドレア礼拝堂(アルチヴェスコヴィーレ博物館)
  2. サン・ヴィターレ聖堂
  3. サンタポリナーレ・ヌオヴォ聖堂
  4. ガッラ・プラキディア廟
  5. ネオニアーノ洗礼堂(正統派洗礼堂)

私たちは車でラヴェンナに行ったので、駐車しやすい場所にあった聖アンドレア礼拝堂(アルチヴェスコヴィーレ博物館)からスタートしました。

アルチヴェスコヴィーレ博物館の中にある礼拝堂は、ラヴェンナ司教ペトルス2世により司教宮殿内部に建てられたギリシャ十字型。狭い空間の中がぎっしりとモザイクで埋め尽くされ、思わずポカンと口を開けて見上げてしまうほど。規模は小さくとも間近で見られる分、細部まで見られます。天井の四隅からにゅっと手を伸ばして中央の円を支える天使たちとその間の羊たち、後陣半円天井の青と白・黄色のコントラストが印象的です。

私たちが買った当時の3史跡チケットには入っていませんが、アルチヴェスコヴィーレ博物館の隣には八角形のネオニアーノ洗礼堂(正統派洗礼堂)があります(説明はこの項目の下へ)

続いて向かったのは、8つの史跡の中でもより壮大な サン・ヴィターレ聖堂

殉教者聖ヴィターレに捧げられた八角形の礼拝堂。東ゴート王国時代の起工で547年前後にほぼ完成するも、ビザンツ皇帝ユスティニアヌス1世やベネディクト会によって改修されました。天井がとても高い薄暗いなか、ひときわ光を放っているのが主祭壇のある空間。後陣はキリストを中心にした楽園、左右には皇帝ユスティニアヌと皇妃テオドラのモザイク、天井には前回投稿のサンタンドレア礼拝堂と同じく4人の天使が中心の円を支えています。上の金銀キラキラのモザイクだけでなく、床のモザイクも圧巻!

そして旧市街最後の訪問場所は、サンタポッリナーレ・ヌオーヴォ聖堂。

5世紀末~6世紀前半、東ゴート国王・テオドリックの建造で、3身廊のアーチの上にずらりと並ぶ殉教者たちが印象的です。かつてここの床に敷き詰められていたモザイクは、度々起こった高潮の被害のために、16世紀に床面が1.2m以上も持ち上げられたので、残念ながら見ることはできません。右隣、出口になっている中庭もとても素敵です(ギャラリーに写真あり)。

私たちは行っていませんが・・・

ガッラ・プラキディア廟
5世紀建築のローマ皇帝テオドシウス1世の娘ガッラ・プラキディアが眠る霊廟。素朴な外観に反し、内部は大理石とモザイクで覆った豪華な造りです。サン・ヴィターレ聖堂に隣接しているので、共通パスの方は合わせて訪問して下さい。

ネオニアーノ洗礼堂(正統派洗礼堂)
5世紀中ごろにオルソ司教により建造されたラヴェンナ最古の教会堂のひとつ。八角形の洗礼堂の天井の円形装飾メダリオンはヨハネの洗礼を受けるイエス像。後述のアリアーニ洗礼堂のものと同じ場面を描いているので、見比べるとおもしろい。その真下に洗礼盤があり、ここに聖水を入れて洗礼を行った。

共通チケットに含まれないモザイクの史跡

  1. クラッセのサンタポッリナーレ聖堂
  2. アリアーニ洗礼堂(アリウス派洗礼堂)
  3. テオドリック廟

車に戻り、最後の訪問場所は旧市街外・クラッセ地区にあるサンタポッリナーレ聖堂。鈍行列車で1駅、あるいは市バスで行くことができます。

こちらは6世紀半ばの建設。共通パスには入ってないものの、どうしても見たかったには後陣の半ドーム天井キリストの変容」で、可愛い羊や緑がいっぱい。牧歌的で心が和みます。

私たちは行っていませんが・・・

アリアーニ洗礼堂(アリウス派洗礼堂)
6世紀、テオドリックがアリウス派の洗礼堂として建造した八角形のレンガ造りの洗礼堂。天井のモザイク画はヨハネの洗礼を受けるキリスト像ですが、アリウス派はという三位一体を認めずキリストを人と解釈したためより人間らしく描かれており、前述のネオ二アーノとの違いも興味深いです。

テオドリック廟
テオドリックが亡くなる直前に自ら築いた円形2階建ての珍しい霊廟。

モザイク以外の見どころ

ラヴェンナには、当時は俗語であったイタリア語で「神曲」を書き、偉大な詩人・イタリア語の父として有名な ダンテ・アリギエーリのお墓 があります。あれ?ダンテはフィレンツェ生まれ・育ちだし、フィレンツェのサンタ・クローチェ教会にもお墓があるのでは?と思った方もいらっしゃるでしょう。ダンテはフィレンツェ共和国の政治にグエルファ党(教皇派)として参加していましたが、ギベッリーニ党(皇帝派)との政治紛争でフィレンツェから永久追放され、最後はラヴェンナ領主に招かれてラヴェンナに住み、ここで生涯を終えたのです。1321年にダンテが亡くなった時はラヴェンナ領主により小さな礼拝堂が建設され、ラヴェンナがヴェネツィア共和国統治下にあった1483年、現在も墓にあるレリーフが制作されます。1500年~1700年にフィレンツェとラヴェンナで彼の遺骨を巡って抗争があった間、それはフランチェスコ会の修道士によって守られ、1782年に現在のお墓となりました。

その裏には ダンテの家と名付けられた博物館 が。ダンテにまつわる美術品や資料が展示されていますが、博物館に入らずとも、中庭には原題アーチストによるダンテの肖像画や彫刻があってとても楽しいです。

そして面白かったのが屋内市場。

市場と言うと新鮮な野菜とか肉の店が並ぶのを想像されると思いますが、ここはロマーニャの食材を集めたお店、スーパーのCOOP、飲食店が入っています。レンガ造りの渋い建物の中はとても近代的でオシャレ。食事するもよし、お土産を買うもよし。

生パスタ屋さんはカウンターの後ろでおばさんが作っているので、それを見るのも楽しいです!

ちなみに私たちが食事したレストランはコチラ。

ラヴェンナのロマーニャ郷土料理店「Osteria Passatelli」

また、モザイクの町だけあっていろんなものがモザイクでできてます。

 旧市街の道の標識は、こんな感じでほとんどがモザイク有名作品の絵になっていました!

他にも見どころはあるかもしれませんが、こうしてみると丸1日いても足りないくらい観光名所がいくつもあるラヴェンナ。ボローニャからは1時間ちょっと、フィレンツェやヴェネツィアからも比較的アクセスは良いし、アドリア海沿いを南北に移動される方にも! 長年行きたかった所ですが予想以上に良かったので、本当におススメです。

ラヴェンナの宿泊施設はコチラ

ギャラリー(クリックすると拡大します)
基本情報

【観光協会】
Ravenna Turismo

【モザイク教会5つの専用サイト&チケットオンライン】
Ravenna Mosaici

【行き方】
ボローニャから直通電車で1時間10分、ラヴェンナ駅から旧市街までは徒歩10分弱。
フィレンツェからはボローニャ乗り換えで合計2時間10分~30分ほど。ファエンツァでバスに乗り換えた場合は合計3時間10分~30分かかりますが、3分の1くらいの料金で行くことができます(バスはトレニタリア提携バスなので、トレニイタリアのサイトから時刻表検索&チケット購入が可能)

電車の乗り方についてはこちらを参照ください。

電車を乗りこなそう! Trenitalia 編

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飾らない、ありのままのイタリアへ!

人口や景観など、「イタリアの最も美しい村」協会が設けた厳しい基準を満たした村だけが加盟を認められる「イタリアの最も美しい村」。その中から、イタリア在住20年以上、トスカーナ州の田舎町に暮らす著者が、“忘れられない”30の村をセレクト。古きよきものが息づく小さな村の魅力を、旅先での出会いやエピソードをちりばめながら綴る。

本の詳細はこちら

 

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