ヴァザーリのロッジアから絶景を見渡す、カスティリオン・フィオレンティーノ

カスティリオン・フィオレンティーノは、オスカー受賞映画「ライフ・イズ・ビューティフル」が撮影されたアレッツォからたった1駅、そして同映画の冒頭シーン、ロベルト・ベニーニ扮するグイードが運転する車が制御不能になったシーンを撮影した村でもあります。実は通訳の仕事で1泊し、翌朝の仕事前に30分だけ散歩したことがあるのですが、やっと再訪することができました。

駅に降り立ってすぐに旧市街が見えるのですが、そこまではゆるやかな坂道をえっちらおっちら15分ほど歩きます。標高342mにある旧市街は南北に長く、南北それぞれにある2つの門から入ることができます。グーグルマップでは両方の行き方が出ると思いますが、少し楽なのは北から、このフィレンツェ門から入るほうをおススメします。

名前の「Castiglion Fiorentinoは、フィレンツェの城壁に囲まれた村という意味。アレッツォ県にあるのにどうしてフィレンツェ?と思われるかもしれませんが、ここは ルチニャーノ や モンテ・サン・サヴィーノ などの他のキアーナ渓谷の村々と同様に、中世の頃からフィレンツェ、アレッツォ、シエナなどの町が交わる重要他であり、最終的に1384年からはフィレンツェ共和国の統治下に置かれたから。1014年の記録では「Castiglion Aretino(アレッツォの城壁に囲まれた村)」、そしてフィレンツェの前にペルージャが統治していた時代は「Castiglion Perugino(ペルージャの城壁に囲まれた村)」と呼ばれていました。イタリア統一、そして今のトスカーナ州の領土区画が決まった時に「Castiglion Aretino」に戻らなかったのかは、なぜだか分かりませんが・・・

という訳で、旧市街の建物に掲げられている紋章の中に、もちろんメディチの紋章もありました!

フィレンツェ門からまっすぐ行くと、ほどなく到着するのがムニチーピオ広場。その名前の通り現在の市役所がある広場なのですが、その建物はペルージャ統治時代の14世紀にまで遡ります。そして市役所の向かいにあるのが、ヴァザーリのロッジア。

ヴァザーリと言えば、フィレンツェのヴェッキオ宮殿からピッティ宮殿をつなぐ「ヴァザーリの回廊」や、ルネサンス期の芸術家たちを面白く紹介した「芸術家列伝」で有名ですが、彼も16世紀半ばに活躍したアレッツォ出身の芸術家です。このロッジアは彼の名前で呼ばれているものの、元々は中世から存在していたもの。1513年に新しく建て替えられたものの状態は思わしくなく、トスカーナ大公のコジモ1世とともによくここを訪れていたヴァザーリが1560年からの改修を受け持ったことから、この名前がついたよう。この頃にロッジアの正面に漬けられたメディチ家の紋章の他、ロッジア下にも様々な有力家系の家紋が飾られており、いロッビア工房の彩色テラコッタ製のものもいくつか。ロッジアの安定性のために一時は閉鎖された3つの開口部からは、なだらかに広がる美しい自然や町並みを見ることができます。

市役所の右の道を上ると、村の中心で一番の高みにあるカッセロへ出ます。ここは紀元前より人々が住み、中世までに防御のための城壁が建設された後、周辺の要所や道を監視するために11世紀に建てられた要塞でした。ペルージャ統治時代の1350年頃に最後の最後の砦として、エトルリア時代のものを基礎として更に小さなカッセロと塔が建設されます。残念ながら私が行った時にはクローズでしたが、5月~9月の土・日は塔の上にのぼることができます。塔にのぼらずとも、芝生が美しい敷地は開放的で、ここからも美しい景色が見渡せます。テーブルやイスもあり、ハイシーズンには飲食店も開くようです。

塔に上るのは有料ですが、カッセロ内にある考古学博物館や絵画館は無料! こちらもオフシーズンはクローズなのですが、事前に依頼すれば見学することができます → 博物館の基本情報はコチラ

考古学博物館はカッセロ内にあるプレトリオ宮内の1階と3階(2階は市立図書館)、エトルリア時代から中世までテーマごとに5つの間に別れて展示されています。広い湿原地帯であった時代や、その後の開墾と水道事業の変遷、エトルリア時代の遺跡やそこから発掘された土器や銅製品、当時の建物の再現など。時代の変遷とともにエリアや村がどのように変わっていったかもパネルで分かりやすく表示されています。

その隣にあるサンタンジェロ教会は絵画館になっており、1階の元聖具室には中世の金銀細工の技を屈指した十字架や聖女オルソラの胸像、2階の絵画館ではタッデオ・ガッティやバルトロメオ・デッラ・ガッタなど、12~16世紀の板絵を鑑賞することができます。

カッセロ、そしてヴァザーリのロッジアからも見えていた大きな鐘楼は、村の低い位置にあるサン・ジュリアーノ・コッレジャータ教会は19世紀の建設。中にはバルトロメオ・デッラ・ガッタの聖母像や、ロッビア工房の彩色テラコッタなどの作品も見ることができます。今では付属品のように右にくっついているのがサン・ジュリアーノ教区教会で、こちらは15世紀中ごろに再建されたもの。

ここから更に下ってゆくと、入ったフィレンツェ門から逆側のローマ門へ到着します。そこから出て駅へ向かうのも良いですが、門の左右に出ている路地では昔ながらの石造りの建物が今も一般家屋として使われている住民エリア。電車まで時間のある方は、ぜひこの路地も気ままに散策してみてください。

こんな風に散策や博物館をゆっくり堪能しても、3時間あれば十分に村を満喫できます。冬に訪れたこともありますが、観光客はほとんどおらず、古い町並みが残る村なのに今の住民の営みがひしひしと感じられ、旅人もそこに入り込んだような気分になれる村。フィレンツェやアレッツォを起点にして他の村と一緒に周るもよし、電車だけで行けるので「小さな村」に初めて行く人にもおススメです。

アレッツォの宿泊施設はコチラ

カスティリオン・フィオレンティーノの宿泊施設はコチラ

ギャラリー(クリックすると拡大します)
基本情報

Castiglion Fiorentino Turismo(市の観光サイト)

【行き方】
フィレンツェ駅から直通急行電車で約1時間20分、鈍行で約1時間50分。アレッツォ駅からは次の駅で約15分。駅から中心の広場までは徒歩約15分、観光時間は2時間~半日で十分です。アレッツォに滞在して、アレッツォから簡単に行ける小さな村巡りも良いですね。

電車の乗り方などは、こちらの記事を参照ください。

愛すべき、美しい30の村
飾らない、ありのままのイタリアへ!

人口や景観など、「イタリアの最も美しい村」協会が設けた厳しい基準を満たした村だけが加盟を認められる「イタリアの最も美しい村」。その中から、イタリア在住20年以上、トスカーナ州の田舎町に暮らす著者が、“忘れられない”30の村をセレクト。古きよきものが息づく小さな村の魅力を、旅先での出会いやエピソードをちりばめながら綴る。

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