トスカーナ州東部、アレッツォ県とシエナ県をまたがるキアーナ渓谷。ここは高級牛と知られるキアニーナ牛の産地であるだけでなく、モンテプルチャーノやコルトーナ、「イタリアの最も美しい村」にも加盟したルチニャーノなどの珠玉の村もたくさん。そのうちの1つモンテ・サン・サヴィーノは前から目をつけていた村だったのですが、春の某日、アレッツォ県での仕事ついでにやっと訪問することができました。
村の歴史は古く、エトルリア時代から。フィレンツェ、アレッツォ、シエナ、ペルージャの間の要所であることから、中世には他のキアーナ渓谷の村と同様、替わる替えわるそれらの都市国家の支配下に置かれます。最終的にフィレンツェ共和国下に入ったのは1384年のこと。
着いたのは夜。アレッツォからRFI線というトレニタリアではない電車で行ったので、駅からはえっちらおっちら20分ほどゆるやかな坂道を上っていきます。他の村と同様で高みにあり、かつては城塞があった村。村の南側にあるローマ門から旧市街へ入ります。
そこからは真逆のフィレンツェ門までまっすぐとメインストリートが通っていて分かりやすい町並み。ちょうど中央に、現在は市役所でもあるディ・モンテ宮があります。村が一番繁栄した1400年代半ば~1500年代の半ば、フィレンツェ出身で枢機卿なども輩出したディ・モンテ家の館です。
夜でも開いていたので入ってみると、階段に「元監獄」の看板が。ここは後に裁判所となり、監獄も併設されていたのです。
そのまんま、監獄!いくつもの部屋に分かれた天井の低い房がありました。当たり前ですが、二重扉!
そしてその次は、24時まで開いているというチステルノーネへ。チステルノ=井戸、に拡大辞がオーネがついて「大きな井戸」を表すその場所は、ディ・モンテ宮の裏側、ちょうど庭園になっている場所の1階にあります。
(上の写真右の橋がTOP写真のモンテ宮と庭をつなぐ橋です)
外観からは貯水槽とは分からないですが、中に入ってみると・・・別世界に入ったような光景が広がっていました。
建設は1500年代末~1600年代初頭。当時はリヴォルノに続くトスカーナ公国で2番目に大きな貯水槽だったそうです。ここは毎日10時~24時(冬は20時)まで開いていますが、緑に浮かび上がる照明がある夜がおススメです。翌朝に建物の中にも入ってみましたが
市役所なので平日昼間は事務所以外の廊下などは誰でも入れるようになっています。ディ・モンテ家の人々の肖像画ギャラリー、柱廊が美しい中庭、そしてチステルノーネ上にある庭と小さなローマ劇場が見どころ。
そしてディ・モンテ宮の左横の広場にあるのがサンダゴスティーニ教会。残念ながらお葬式前で亡くなった方が公開安置されていたため主祭壇には近づけなかったのですが、左横の美しい礼拝堂を堪能しました。
教会はその他にも、ディ・モンテ宮挟んでサンダゴスティーノ教会と逆側にあるミーゼリコルディア教会、そしてフィレンツェ門近くのサンタ・キアーラ教会があります。後者はロッビア工房の色彩テラコッタが数多く残っていますので、ロッビア工房ファンの方は必見。
サンタ・キアーラ教会の右隣りにあるのはカッセロ。もともとは14世紀建設の要塞で、今はファサードとその裏の建物部分だけが残っています。
入ると可愛らしい中庭が。すぐ右手が観光案内所なので、まずはじめにここに寄って村の地図をもらうのも良いでしょう。1階はコンベンションルーム、2階、3階は常設と期間限定の絵画や職人の作品展示が行われています。また、かつてユダヤ人を受け入れていたためにシナゴーグがありますが、ここは観光案内所に行って係員の人と同伴で行くことになりますので、シナゴーグを見たい方はここでまず申し出て下さい。
サンタゴスティーニ教会の斜め前には、14世紀建設のプレトリオ宮とその塔が残っています。プレトリオとはフィレンツェ共和国から派遣された裁判や行政を担うプレトリオの館であり、塔の壁にはプレトリオを勤めた家の紋章が飾られています。一時はサンタゴスティーニ教会のあるディ・モンテ広場まであったそうですが、縮小後、19世紀末には市の所有となり、現在は国防省警察署や市役所の事務所になっています。
30mある塔はリフォームされた階段で上ることができます。
塔の上からはレンガ色の村とキアーナ渓谷の豊かな自然が一望できます。
素晴らしいのは、ここで紹介した見どころは全部無料で見られること。シナゴーグを案内してくれた係員の方がおっしゃってましたが、市が観光に力を入れ、いろんな歴史的建築物を整備しているそうです。その最新が冒頭で紹介したチステルノーネ。
モンテ・サン・サヴィーノは、60年近い歴史を持つポルケッタ(子豚の丸焼き)祭り、そして世界一長いポルケッタがギネス認定も持っています! ポルケッタ祭りは例年9月第二週の水~日曜日ですが、祭りでなくとも村の肉屋さんとそのレストランで極上のポルケッタが味わえますよ。
宿泊はこちらがおススメ
B&B Baldovino di Monte
まさに上記のアルドさんのお店のほぼ前、カッセロやフィレンツェ門すぐそこ。こちらもコスパが良く、お部屋も清潔。ややWIFIの入りが悪いのとエレベーターがないくらいで、イタリアの古い建物の小さな宿ならありがちなことくらいです。
ギャラリー(クリックすると拡大します)
基本情報
【行き方】
アレッツォ駅から電車RFI線で約30分、モンテ・サン・サヴィーノ駅から徒歩約25分。またはアレッツォ駅前バスターミナルよりバス138番で約30分、モンテ・サン・サヴィーノ駅前バス停から徒歩約15分、あるいはLS9番に乗り換えてローマ門前またはフィレンツェ門前で下車。
バス138番の時刻表や路線図はこちら
バスLS9番の時刻表や路線図はこちら
「Download line timetable and map」をクリックすると時刻表がダウンロードできます。
バス138番、LS9番ともに「イタリアの美しい村」にも加盟しているルチニャーノを通りますので、一緒に観光ができます。移動時間もたった20分!
電車、バスの乗り方などはこちらの記事を参考にしてください。
※ただしRFI線はTRENITALIAのサイトで時刻表は掲載されていますが、サイトやアプリから切符の購入はできません。アレッツォ駅構内のジョルナライオ(新聞・雑誌売り場)で購入してください。駅の発着案内板に乗車ホームなどは表示されます。
電車とバスで行くアテンド付きツアーもありますので、自分たちだけで行くのが不安な方は、ぜひご参加下さい。
愛すべき、美しい30の村
飾らない、ありのままのイタリアへ!人口や景観など、「イタリアの最も美しい村」協会が設けた厳しい基準を満たした村だけが加盟を認められる「イタリアの最も美しい村」。その中から、イタリア在住20年以上、トスカーナ州の田舎町に暮らす著者が、“忘れられない”30の村をセレクト。古きよきものが息づく小さな村の魅力を、旅先での出会いやエピソードをちりばめながら綴る。
本の詳細はこちら
「フィレンツェから日帰りで行ける!トスカーナの小さな村10選」
「トスカーナのおうちごはん春夏編20レシピ」
「コロナ・ロックダウン緩和直後のイタリア・フィレンツェ記録写真集(モノクロ版)」
「コロナ・ロックダウン緩和直後のイタリア・フィレンツェ記録写真集(カラー版)」
「トスカーナのおうちごはん秋冬編20レシピ」
いずれも読み放題に入っています!