今回のローマ出張は、日本の有機農家さんのイタリア有機農家への訪問。リサーチの仕事をさせて頂いている会社の社長さんの個人的な紹介で、東京郊外の「有機農園けのひ」の北原さんご家族の視察を農家のリサーチからアポまでのコーディネイトと、当日の通訳をさせて頂きました。
北原さんご夫婦はお互いサラリーマンを辞めて、ゼロから有機農園を開業。しかも、元々農家のおうちでも全くないのに、です。3人のお子さんを育てながら、お母さんが安全な野菜を安心してそしてちょっとひと手間でごちそうができるように、食べ方の提案をしながら販売しています。
そして今回訪問した2つの農家も同じく家族経営で、有機、自然農法にこだわって野菜を作っているところです。偶然にも、2つともが北原さんと同じ脱サラから新規就農をした農家!
1軒目は、1986年、まだ有機という言葉がイタリアでも超マイナーだった頃、安定高額収入もステイタスもあった銀行を退職し、エンツォさんが開いた農家。
赤ラディッキオや黒キャベツなど、日本でなじみの少ないイタリア野菜。そして、よかったらランチも食べて行って、と農園内のご自宅にお招きいただきました。銀行員時代に過ごしていた苦悶の日々や、「人生を見つけるため」と有機農家になる決断、そして長い試行錯誤のこれまでの歩みを支えてきた奥様と今はマーケティング担当をされている娘さんのエマヌエラさん。本場ローマのカルボナーラと、北原さんが食べてみたい、と言った赤ラディッキオを畑からぬいてそのままクチーナ・エコノミカ(調理もできる薪ストーブ)へ。
カルボナーラ、昨日食べたレストランより、いや、私の人生で食べた全てのカルボナーラよりも、断トツに美味しい!決めては卵、有機の野菜くずや飼料で、のびのびと育てられた卵の濃厚な味がそのままカルボナーラの美味しさになっています。そして北原さんが興味を持たれていたアンティチョークの卵焼き、赤ラディッキオのグリル、どちらも材料の味がそのままで、こんな贅沢はないってほどの悶絶するような美味しさです。
「次のアポはもういいやん、まだまだ話したいことあるから!」とエンツォおじさんに冗談ぽく(たぶん本気)言われつつ、超名残惜しみながら、最後は感涙とハグでお別れ・・・
また絶対、今度はもっと時間をとってきます!と誓いながら。
そして2軒目は、ローマの北の農家。 ここは有機、いやビオダイナミック農法をガチで実践している農家です。
この農家のマッシモも14年前に移住し、家庭菜園から敷地を拡げ農家に転身。そしてここ数年は、シュタイナーの提唱するビオダイナミック農法を取り入れ、牛の角に堆肥を詰め熟成させたものを希釈させて散布したり、月と星座など「宇宙の力」を取り入れて種まき、苗植えなどの作業を行っています。
ここでも畑からひっこぬいたルーコラをそのまま食べましたが、こんなイキイキと歯ごたえがあって、味の濃いルーコラは初めて食べました!
氷交じりの小雨と風の中、畑と野菜、堆肥などの説明を受け、こちらも農園内の自宅でお茶を頂きながら、最後のお話を。
ここでも1軒目でも言われたことは、「イタリアと日本という遠く離れたところにいて、同じことを考えて、同じ思いを持って野菜を作っている人がいるなんて!」
北原さんから希望を聞いて、リサーチをして、説明して、選んでもらったこの2農家。アポ入れをしたら、「何でウチみたいなところに日本から視察に来るの?」と真剣に驚きつつも、北原さんの農園や視察意図を聞いて、訪問を受け入れてくれた。北原さんが視察の目的を達成し、喜んで頂けたことはもちろんだけれどイタリアの農家の方々が、地球の裏側から来た「同志」を暖かく迎え入れ、熱く語り合い、共感し、最後は感動で涙ぐみながら別れを惜しんでくれたことに、私もこの視察、いや「運命的な出会い」をコーディネイトできたことを心から誇りに思い、いろんな思いがこみ上げて来て涙ぐんでしまいました。そして通訳は、いつかは自動翻訳機に置き換えられるなんて話も聞きますが、心を通わせるリアルな言葉や感情は、機械では絶対伝えることはできないはず。
コーディネイターとして、通訳として、そして人として、私にとっても忘れられない1日となりました。