イタリアの好きな芸術家は?と聞かれると、1人にはなかなか絞りきれないのですが、ある仕事の前までは「ミケランジェロかジョット」と答えていました。しかし、不定期ながらいつもご依頼を頂く日経新聞さんの日曜美術特集の取材通訳で、記者さんと一緒にある画家の作品を巡ってから一気に虜に・・・それは、カラヴァッジョ。フルネームはミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ(そうすると、ミケランジェロっていうのも間違いではない・笑)。
1571年ミラノに生まれた彼は、24歳からローマで次々と評価を受けていきます。殺人犯としてイタリアやマルタ島へと逃亡し、最後はローマ教皇に恩赦を求めて移動中にポルト・エルコレで最期を遂げましたが、短い生涯の間に巧みに明暗を使って(キアーロ・スクーロ)決定的な一瞬を切り取り、大きなコントラストを付けたドラマチックな作風(テネブリズム)を作り上げました。それほど興味がなかった私も、そんな作風にけっこう衝撃を受けすっかり虜になってしまったのです。というのも、私が見ていたカラヴァッジョの作品はフィレンツェ・ウフィッツィ美術館にある初期作品ばかり。これぞカラヴァッジョという作品の多くは、ローマに残っているのです。日本大使館に行く所要の待ち時間に、久しぶりに彼の作品を見に行きましたが、やはり鳥肌が立つような感動がこみ上げてきました。
興味を持たれた方は、定番ローマ観光の隙間時間に、あるいはカラヴァッジョ巡りをテーマにしてぜひローマを周ってみてください!
サン・ルイージ・ディ・フランチェスコ教会
観光名所でもあるナヴォ―ナ広場至近。この教会の左奥には、カラヴァッジョの代表作ともいえる「聖マタイ三部作」とも呼ばれる3作品が残っています。ここを訪れるほとんどの人の目的はこれらの作品で、そこだけ人だかりができているので場所はすぐに分かると思います。コインを入れて照明をつけるシステムですが、継続して誰かが証明をつけてくれるほど、いつ行っても鑑賞に来る人が絶えません。
左側面が「聖マタイの召し出し」、正面が「聖マタイと天使」、右側面が「聖マタイの殉教」。
どれも甲乙つけがたいですが、カラヴァッジョの作品の中で好きな作品の1つがこの「聖マタイの召し出し」。これはキリストが、徴税人であったマタイを弟子に召命する場面が描かれているのですが、この指さした先の男たちが
「え?こいつ?」と、驚きながらもちょっととぼけた顔をしているのがなんともユーモラスなのです。聖なるシーンばかりを描いているのに、登場人物が「俗っぽい」・・・それが当時は問題視されていたこともあるそうですが、遠い別世界の宗教の世界がとても身近に感じます。
そして正面の「聖マタイと天使」は、真っ黒な背景に浮かぶマタイと天使の構図がとても美しいです。
サンタゴスティーノ教会
このサンタゴスティーノ教会もナヴォ―ナ広場の近く。サン・ルイージ・ディ・フランチェスコ教会と合わせて鑑賞しても30分ほどなので、ぜひ2つ一緒に周ってください。こちらは入ってすぐの左身廊に「ロレートの聖母」があります。
ここはカラヴァッジョの作品は1つだけですが、なんとラファエロの作品もあります。ロレートの聖母のある左身廊と中央を分ける柱の真ん中あたりにある、「預言者イザヤ」。
ラファエロらしい、柔らかなタッチが目を引きます。
この時に私が周ったのはこの2つの教会だけですが、時間のない方はこれだけでも十分でしょう。ローマでは他にも、下記の場所上の2つの教会合わせて合計9つで、カラヴァッジョの21作品が見られます。
- サンタ・マリア・デル・ポポロ教会、「聖パウロの改宗」と「聖ペテロの磔刑」
- ボルゲーゼ美術館、「果物籠を持つ少年」、「病める少年バッコス」、 「聖アンナと聖母子(蛇の聖母)」、「ゴリアテの頭を持つダヴィデ」、 「執筆する聖ヒエロニムス」
- ヴァチカン美術館、「キリスト降架」
- ドーリア・パンフィーリ美術館、「改悛のマグダラのマリア」、「エジプトへの逃避途上の休息」、「洗礼者聖ヨハネ」
- バルベリーニ宮、「ホロフェルネスの首を斬るユディト」、 「ナルシスト」、「瞑想する聖フランチェスコ」
- カピトリーノ美術館、「女占い師」、「洗礼者ヨハネ」
- コルシーニ宮殿、「洗礼者ヨハネ」
取材時はナヴォ―ナ広場至近の2つの教会とサンタ・マリア・デル・ポポロ教会、ボルゲーゼ美術館、ヴァチカン美術館を周ったので、次回はその下の4か所を少しづつでも見て周りたいです。全てを見られるのはいつになるでしょうか~下にマップを載せていますので、周る時の参考にしてくださいね。
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