世界遺産数が世界でナンバー1(58か所)のイタリアですが、そのうち9つ(うち2つは他国や他州と共同登録)がトスカーナ州にあります。フィレンツェとその郊外にあるメディチ家のヴィラ群もその1つ。私有となって見学できないヴィラもありますが、無料でガイド付き見学ができるものもいくつかあります!
私が最初に行ったのは、フィレンツェ市の北側ある「ペトライアの別荘」。最寄りの駅やバス停からは、歩くこと20分以上・・・
最後は一本道なので、奥に見えるこの門を目指してひたすら歩きます。門を入って坂をのぼるとすぐに、右の門から庭に入るよう標識がでており、庭から上っててっぺんにある別荘に行きましょう。扉を開けて左側にカウンターがあるので、見学の旨を伝えると次の回の案内をしてくれます。
名前のペトライアの起源は、石が多い地質・ピエトロ―ザから。建物の記録は1300年まで遡り、今も残る塔もその当時からのものだそう。当初ブルネッレスキ家の所有から転々としたものの、1544年にトスカーナ公であるコジモ1世が買い取ります。そして1587年に次男の枢機卿だったフェルディナンドに譲渡し、長男のフランチェスコが亡くなった後にトスカーナ公として翌年から建物のリニューアルを始めるのでした。
そんなお話は、見学の一番最初の部屋から。ここにはフェルディナンド1世の肖像画と、1599年~1601年に描かれた14のメディチ家所有の館の絵がいくつかの部屋に分かれて展示されています。まさにそれは、当時の館がどのようなものだったのかを知る証拠。全てが実物に忠実に再現されているのですが、ペトライアの別荘は左右対称の美を守るために実際は存在しない階段が描かれていたりも・・・また建物だけでなく人物の様子もとても興味深く、現在のゴルフやテニスのような遊びに興じるその姿にやたら親近感を感じてしまいます。
それらの部屋を周った後・・・ガイドさんが「さ、WOWの準備はできましたか?」と言って案内してくれたのが、こちら!
WOW!!!!
ペトライアの別荘のシンボルでもある中庭。ここは1598年から1599年にフェルディナンド1世の妻であるロレーナのクリスティーナの命によって扉とその反対側の壁の2方が装飾されました。描かれたのは下ロレーナ公が活躍したエルサレム奪回。一方、残された2方の壁は彼らの息子の命により、歴代のメディチ家の功績が描かれています。しかし、天井を見ておや?と思いませんか?鉄フレームにガラスで覆われた天井は、それよりも200年以上あとに付け加えられたもの。というのもペトライアの別荘は、1861年後のイタリア統一後はイタリア国王サヴォイア家の所有となり、フィレンツェが首都だった時代にはここにサヴォイア家が暮らしていたのです。この近代的な天井と床の大理石は、ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世の息子の婚約式に合わせて付け加えられ、舞踏の間として使用されたのでした。
そしてこちらが、中庭に隣接する祝宴の間。そこから見学は2階のサヴォイアの数々の間へと続きます。
1階の祝宴の間のように、各部屋は鮮やかな壁布で覆われている折、その色で呼ばれています。こちらは青の間、元々は国王の寝室だったそう。ここからテラスへ出て、中庭のダンスホールが見渡せるようになっています。
一方こちらは「ベッラ・ロジーナ(美しいローザちゃん)」と呼ばれた国王の2番目の妻となったローザ・ベルチェッラ―ナの寝室。彼女は14歳の時に27歳の国王と知り合い、その後愛人関係となりました。1番目の妻の死亡後に晴れて妻になったものの、女王の権利を持たない形式での結婚でした。しかしトリノ郊外の伯爵の称号や2人の子どもにも恵まれ、それなりに幸せな一生を送ったよう。
そして緑の間から見えるのは、緑いっぱいの庭園。1400年代からフィレンツェと家の起源である北のムジェッロ地方の別荘の整備を行ったきたメディチ家ですが、庭は1500年代の庭園モデルに従って設計されました。土地の傾斜を利用して庭は3段、左右対称の設計がとても美しいです。
そして最後はガイドさん曰く「一番楽しい部屋」、1800年代中ばに作られたプレイルーム! サヴォイア家もこの部屋の趣旨を守り、2台のビリアード台の他、ピンボール台なども置いて、徹底的に娯楽を楽しめる部屋に。ここにどんな客が来て、どんな遊びに興じたのでしょうか?
天気が悪くてちょっと残念でしたが、また花がもっと咲く時期にいつか再訪したいと思います。
ちなみにここ、イースターの晩の旅行番組「キリマンジャロ」の特番
でも紹介されたため、翌日は平均1日300人の訪問者が1000人に達したのだとか!私の回のガイドさんが最後のグループのガイドをしたそうなのですが、本当は定員25人のところ、80人以上・・・小さな部屋は入れず、ショートカットの見学だったそう。しかし通常(少なくとも平日)はそこまで多くはなく、私が行った日の10時半の回は私とイタリア人のご夫婦2組の5人だけでした。とはいえ、開始時間の少し前には着く方がベター。最寄りの駅やバス停からも遠く、敷地内にも近くにもお店はないので、水などが必要な方はあらかじめ買っていきましょう。
ギャラリー(クリックすると拡大します)
基本情報
Villa medicea della Petraia
Via della Petraia, 40 Località Castello, 50141 Firenze
Tel : +39 055 451208
【庭園】
4月~9月・火~日、8:30 – 18:30
11月~2月・火~日、8:30 – 16:30
3月と10月・火~日、8:30 – 17:30
※入場はいずれも閉園の30分前まで
【別荘】
4月~9月・火~日、9:30、10:30、11:30、14:00、15:00、16:00、17.:00に25人定員でガイド付き見学
11月~2月・火~日、9:30、10:30、11:30、14:00、15:00に25人定員でガイド付き見学
3月と10月・火~日、9:30、10:30、11:30、14:00、15:00、16:00に25人定員でガイド付き見学
※ いずれも月曜日、1月1日、12月25日は休み
※ 予約の必要なし、直接現地へ
【行き方】
フィレンツェ・リフィレディ駅より市バス2番に乗り換え、あるいはフィレンツェ・サンタ・マリア・ノヴェッラ駅から徒歩10分のインデペンデンツァ広場より市バス20番に乗車。いずれにしても別荘の最寄バス停より25分歩きます。バスの乗り方など詳細はこちら。
愛すべき、美しい30の村
飾らない、ありのままのイタリアへ!人口や景観など、「イタリアの最も美しい村」協会が設けた厳しい基準を満たした村だけが加盟を認められる「イタリアの最も美しい村」。その中から、イタリア在住20年以上、トスカーナ州の田舎町に暮らす著者が、“忘れられない”30の村をセレクト。古きよきものが息づく小さな村の魅力を、旅先での出会いやエピソードをちりばめながら綴る。
本の詳細はこちら
「フィレンツェから日帰りで行ける!トスカーナの小さな村10選」
「トスカーナのおうちごはん春夏編20レシピ」
「コロナ・ロックダウン緩和直後のイタリア・フィレンツェ記録写真集(モノクロ版)」
「コロナ・ロックダウン緩和直後のイタリア・フィレンツェ記録写真集(カラー版)」
「トスカーナのおうちごはん秋冬編20レシピ」
いずれも読み放題に入っています!