イタリアで、特にフィレンツェの印象が強いのが「伝統工芸」「職人」。「伝統工芸」「職人」と一言で言っても、いろんな分野がありますが、今回ご紹介するのは、イタリアらしい芸術関連のモザイクです。モザイクと言うと、皆さんまず想像されるのはビザンチンの黄金のモザイクか、古代の石のモザイク、いずれも小さく四角に切った素材を寄せ合わせて作られたものですが、この「フィレンツェ・モザイク」は、そうではありません。様々な種類の天然石からその色や石目を選び、それをパズルのように組み合わせたものなのです。その歴史をさかのぼること約500年!フィレンツェがメディチ家によって統治されていた頃まで遡ります。
そしてその精度たるや!写真か絵画か?と思われるこんな作品、一体どのようにして作られるのでしょうか?このフィレンツェ・モザイクを制作する工房は市内にいくつかありますが、その制作風景を日常的に見られるのが、この「スカルペッリ」なのです。
現在のスカルペッリの職人さんは、こちらの方々。一番右がスカルペッリのお父さんで皆の師匠であるレンツォさん、そして現在工房を牽引してるのが、写真中央の息子のレオナルドさんです。ここの素晴らしい所は、彼らの作業工房がそのまま店の奥にあり、職人さんの勤務時間であればいつでもその作業を見ることができるのです。また、日本人スタッフの方もいらっしゃるので、シフトが合えば日本語でフィレンツェ・モザイクの基礎知識から、スカルペッリ工房のことまで、何でも日本語で解説して頂けます。
たとえばこの石。職人はただ作品をつくればよいだけでなく、石探しから係わるのだとか!そしてその石を見て、作品の、作品の中の各パーツに合う色と柄、石目などを選んでいく。モザイクの具体的な作業の前に行うこの石選びが、重要でかつとても気の遠くなる作業だそうです。
石が決まったら、今度はカッティング。弓のような器具を使って石を切断していくのですが、これがまた精密でかつ時間のかかる作業です。決して機械を使わず、昔ながらの器具と方法で、1つ1つ手作業を行っていきます。
そして、組み立て。職人さんが作っているのは、フィレンツェのシンボルの1つ・ヴェッキオ宮殿です。テーブルトップや額縁でも大きな作品がありますが、作品はピンキリでこのような小さな作品も。写真手前、作りかけの作品を見ると、石の模様をそのまま生かした大きなピースもたくさんあることが分かります。問題は、その絵に合う石を見つけること、というのが本当によく分かりますね。
石を選んで、切って、組み合わせて・・・1つ1つの作業を完璧に行えるようになるのは、何十年もかかる職人の世界。しかも、フィレンツェだけの伝統工芸で、その職人の数も減っているとなれば、その存在や技術はとてつもない価値となります。そんな職人さんとその技術を見られる貴重なスカルペッリ工房、ぜひ訪れてみて下さいね。
※ この春にこの工房へお連れしたお客様とは、他にもフィレンツェのジュエリーの工房、ピエンツァの陶器工房にもお連れしました!
※ フィレンツェでは、レザーショップ「Infinity」でも併設の工房で職人さんの作業が見られますよ。
ギャラリー(クリックすると拡大します)
基本情報
Scarpelli Mosaici
Via Ricasoli, 59/r
+39-055-212587
営業日時:月~土・9:30-18:30、日曜定休
※ リニューアルした私のトスカーナ冊子を見ながらのディナー会@大阪を7月3日に行います!まだ若干名入れます! ~ 詳しくはこちらをどうぞ