フィレンツェ北部のおらが村ことロンダでの宿泊施設は、トスカーナ自由自在サイト開設からたくさんの人にお越しいただいている休暇の家がありますが、今年の冬に偶然、このアグリツーリズモの存在を知りました。オーナーさんがとても素敵なだったことはもちろん、パーマカルチャーとハーブコスメをテーマにした新しい体験プログラムも! これからのおらが村滞在は、ご希望に合わせて休暇の家とこのアグリツーリズモの2つから選んで頂くことができます。
場所はトレッキングなどで私も通ったことがあるものの、看板なども出ていない森の中。犬の吠える声が印象的だったのですが、それは外だけのことで、中に入ると可愛いワンちゃんたちが迎えてくれました。みんなとっても賢いです。
オーナーのアンナはフィレンツェ出身。ご両親がまだ結婚前に魅せられ、司教区管理だった元教会とその付属の建物と土地を買い取ってリフォームし、別荘にしたのがこのアグリツーリズモの原型です。アンナも幼少からここでバカンスを過ごした思い出の地なのですが・・・結婚、そして仕事で海外生活をしていた間、リタイアしてここに住んでいた両親もその不便さからフィレンツェに戻ることになり、売りに出すことを知ります。でもどうしてもここを守りたくて、彼女が戻って来たのはたった4年前の2019年。そしてすぐにコロナ禍に・・・まだ住民票登録していなかったアンナには市からマスクは支給されず、村に買い物にも行けない状況に! しかし、その時の彼女の行動がすごかった・・・なければ自分で作ればいいやん? 元々していた畑に加え、体を洗うソープや、掃除のための洗剤も手作りしてしまうのです。それって前から知識はあったの?と聞くと、「ううん、自分で調べまくって、ハマった」とキャハハ、と笑うアンナ。本業はパリの研究機関でのリモートワークを午前に、それ以外の時間は全て敷地内のケアに没頭しているそう。
そんな彼女が実践しているのが、「パーマカルチャー」。私も初めて聞いた言葉だったのですが、調べてみると・・・
パーマカルチャーとは、
- パーマネント(永続性)
- 農業(アグリカルチャー)
- 文化(カルチャー)
を組み合わせた言葉で、永続可能な農業をもとに永続可能な文化、即ち、人と自然が共に豊かになるような関係を築いていくためのデザイン手法。1970年にオーストラリアの大学教授ビル・モリソンにより
3つの原理
- 地球への配慮
- 人々への配慮
- 余剰物の共有
と12の原則
- 観察と相互作用
- エネルギーを獲得し、蓄える
- 収穫
- 自律とフィードバックの活用
- 再生可能な資源やサービスの利用と尊重
- ゴミ・無駄を出さない
- 全体から細部までデザイン
- 分離よりも統合
- ゆっくり、小さな解決が一番
- 多様性の活用と尊重
- 接点の活用と辺境の価値
- 変化には創造的に対応して利用する
が提唱されている。
こう書くと難しく感じますが、アンナが実践しているのはとてもシンプルなこと。自然の中にあるものを使って生態系を壊さないように土壌を作り、雨水を貯めて使い、その恵みを余すことなく使い切ったり循環させる。植物もそれぞれの特性を生かして共存させることにより、生態系に負荷をかけずに全てが好循環する・・・例えば乾燥に弱い植物の周りに繁殖力の強いミントを茂らせて影を作る、など。いろんな植物があちらこちらに生えていて、どこからどこまでが植えたものなのか、雑草なのか分からないけれど、アンナの中ではいろんな理由とセンスでデザインされた、「唯一無二の楽園」なのです。
いろんな花、ハーブ、野菜が共同生活をしている、そんな感じの畑。いや、畑という感じが全くしません。私の周りには畑をしている人はたくさんいて、隣の畑エキスパートのエウロおじさんはうちの庭を見て「畑するなら耕さないとダメだよ」と言いますが、パーマカルチャー的にはNG。それは、そこにいる微生物などの生態系を壊してしまうから。でも岩の多い固い土地だったここが、どうしてこんなフワフワな土壌になって、いろんな植物がここまですくすくと育つのか・・・私は農業や科学的なものはド素人ですが、いやだからこそいろんな疑問がわいてきて時間がいくらあっても足りません。
子どもの頃の冒険小屋は今は作業道具入れ。屋根から流れる雨水を無駄にしないためにタンクが据え付けられ、畑には循環パイプが回してあります。こういった大掛かりな仕事はプロにお願いしたり、オリーブの剪定などは知り合いの農家さんに代行してもらってると言いますが、勉強・実践を繰り返してたった3年でこの「楽園」を作り上げたとは、ほんとに脱帽。「もうね、時間がいくらあっても足りないの」と笑うアンナ。可愛らしい少女のようであり、たくましい青年のようでもあり・・・一緒にいるだけで純粋なポジティブ・エネルギーが伝播してくるよう。
さて宿泊施設は、アンナが住む母屋の裏にある別棟のアパートになります。元々教会だった建物の崩壊した部分に増築していますが、できるだけ1200年代オリジナルの部分を活用しています。
表側は可愛い真っ赤な外壁ですが、側面や裏側、また内壁には所々に1200年代の石の壁が。前にはガゼポがあり、ここでゆっくり本を読んだり、食事したりできます。
更にその奥には、もう1つのパノラマテラスが・・・聞こえてくるのは風の音、鳥のさえずりだけ。そしてここからの夕焼けが最高なんです!
アパート入ってすぐはダイニングキッチン。必要な調理器具やお皿、基本調味料(塩、こしょう、砂糖、酢、そしてオリーブオイルは自家製!)も完備、各種紅茶やカッフェ、はちみつも。皿洗いの洗剤や蜜蝋ラップもアンナが作ったものです。写真には写っていませんが、シングルベッドにもなるソファーもあり。
隣の部屋は一瞬ソファーだけの空間かと思いきや・・・レバーを倒すとダブルベッドに早変わり! もう1つのソファーもベッドになるので、合計5人までが宿泊可能です。窓からは緑が美しい山々が見え、また天窓からは降ってきそうなほどの星を見ることができます。その奥がシャワールームで、洗濯機も完備。タオル類一式やドライヤーもあり、洗濯機用洗剤はアンナの造ったものです。ソープやハーブウォーター、肌用クリームもアンナが作ったものですが、シャンプーはありません。
本当に生活できそうな環境ですが、1泊からでも受け付けてくれ、チェックイン・アウト時の最寄り駅との車送迎付き。食事サービスはありませんが、送迎時、または滞在が数日の方は滞在中でも村への買い出しに車を出してくれます。野菜、果物、卵などアンナの生産物を買うこともできます。
さて、滞在中の楽しみ方ですが・・・もちろん、何もせずにただのんびりするのも良し。しかしこの農園に滞在する醍醐味は、やはりパルマカルチャーに触れ学ぶこと。興味のある方は、平日午後または週末であれば、ガイド付き見学が可能です。さらに、ここで栽培されたものの 収穫から製品を作るワークショップ もできます。
季節により素材やできるものが違うので、お問い合わせがあった時点で何ができるかをアンナから提案させていただきます。もちろん、原料のほとんどがアンナとこの自然が育んできたものばかり。
※7月~ラベンダーシーズンは、ラベンダー収穫と蒸留、芳香蒸留水と精油作りを体験していただけます!
パーマカルチャーの地に滞在し、その素材が育つ土地を感じ、普段はお店で買っている製品を手作りするーーー思い出の一品になるだけでなく、植物や自然がいっそう愛おしく、そして今まで何も考えずに購入していた製品の原料や製造に対する見方が変わるかもしれません。もちろん、アンナが作った製品(各種ソープ、クリーム、ウォーター、デオドラント、精油、マセレートオイル、チンキ)を購入することも可能です!
本格的に一緒に農作業やハーブコスメ製造作業をしたいという方は、その対価としてアンナの自宅である母屋での宿泊・食事が提供される交換プログラムへ。英語・イタリア語・フランス語・ドイツ語のいずれかができる方は、WWOOFから直接申し込んでください。
当然ながら滞在中は、ロンダでの人気アクティビティである料理教室、秋の搾油所訪問、隣村のワイナリー訪問なども楽しんでいただけます!
ちなみに徒歩10分弱の距離がありますが、このアグリツーリズモと料理教室の家は森の中ではお隣さん。そしてアンナとフランチェスコは幼馴染!というすごい縁(おらが村は狭い!!)。
アンナのオリーブオイルの搾油もここで行っています。
ワイン好きな方は、おらが村在住のこのワイナリーのスタッフに連れて行ってもらえます。
こうしてまた1つおらが村の新しいプログラムが生まれて、私も感無量です! 田舎ならではののんびり滞在やアクティビティに参加して、新しいイタリアの魅力を発掘してくださいね。
ギャラリー(写真をクリックすると拡大します)
基本情報
【宿泊】
アパート1泊130ユーロ(1~2名の場合)、3名以上の場合はお問い合わせください(5名まで宿泊可能 )
※市が徴収する滞在税1人1泊1ユーロ、最大7泊分が別途かかります。
チェックイン・アウトの最寄り駅との送迎、その際に食料買い出しにも寄ってもらえます。
【ワークショップ】
季節によってできることが違うので、その都度ご提案させていただきます。
例)7月~9、10月頃まではラベンダーの収穫&蒸留・精油と芳香蒸留水づくり
お1人70ユーロ(日本語通訳付き120ユーロ)、2名参加の場合はお1人50ユーロ(日本語通訳付き80ユーロ)、3名以上でご参加の場合はお問い合わせください。
【行き方】
フィレンツェ駅から直通電車で約50分 (Borgo S. Lorenzo 行き・Pontassieve 経由)、 Contea-Londa 下車。
電車についてはこちら 👇 👇 👇
バス322A番の時刻表や路線図はこちら
「Download line timetable and map」をクリックすると時刻表がダウンロードできます。
バスの乗り方などはこちら 👇 👇 👇
ここに宿泊される場合は、チェックイン&アウトの最寄り駅またはバス停間の無料送迎付きです。
フィレンツェ駅や空港、その他の場所からの車送迎(有料)は こちら をご覧ください。
愛すべき、美しい30の村
飾らない、ありのままのイタリアへ!人口や景観など、「イタリアの最も美しい村」協会が設けた厳しい基準を満たした村だけが加盟を認められる「イタリアの最も美しい村」。その中から、イタリア在住20年以上、トスカーナ州の田舎町に暮らす著者が、“忘れられない”30の村をセレクト。古きよきものが息づく小さな村の魅力を、旅先での出会いやエピソードをちりばめながら綴る。
本の詳細はこちら
「フィレンツェから日帰りで行ける!トスカーナの小さな村10選」
「トスカーナのおうちごはん春夏編20レシピ」
「コロナ・ロックダウン緩和直後のイタリア・フィレンツェ記録写真集(モノクロ版)」
「コロナ・ロックダウン緩和直後のイタリア・フィレンツェ記録写真集(カラー版)」
「トスカーナのおうちごはん秋冬編20レシピ」
いずれも読み放題に入っています!