アミアータの南西部にあるモンテ・ラッブロ。SNSなどで要塞のような石造りのモニュメントを何度か見て、一度行ってみたかった所でした。そのモニュメントが何なのか?を調べてみると、ますます興味が・・・そしてこの夏のばーちゃん村滞在時、その地を何度も訪れている友人にタイミングよく誘われて、彼女のガイドで行くことができました。場所はアルチドッソという村のはずれなのですが、途中からは凸凹のオフロードをしばらく行くと、1193mの頂きにうっすらと建物が見えてきます。道の行きつく所には少しの駐車スペースがあり、そこから柵を越えて15分ほど坂を上ると・・・。
この地は1800年代後半、ダヴィデ・ラッツァレッリが生み出した「Giurisdavidica」という新興宗教のコミュニティがあったところです。ダヴィデは1834年、アルチドッソの貧しい家庭に生まれました。若い頃から夢やヴィジョンを語りつつ、荷馬車屋として貧しき放浪生活をしていましたが、1868年ころからキリスト教の新しいビジョンとして、宗教的・社会的な発言を強めていきます。1870年にアルチドッソに帰ってこのモンテ・ラッブロに隠居し、新しい教会の創設を行い、支持者もモンテ・ラッブロに集まってきます。その頃の呼び名は、「アミアータ山のキリスト」
ダヴィデは3つの協会と2つの学校を建設し、その影響力を高めていきます。そして1878年に信者と共にアルチドッソの町に下り、「正義と権利の新しい時代」を説く平和的行進を行っている際、警察などに紛れた何者かに射殺されて最期を迎えたのでした。彼の死の後もGiurisdavidica教は続きますが、2002年、最後の司祭の死によりその幕を閉じます。現在はアルチドッソにダヴィデ・ラッツァレッリ研究所が設置されており、彼の人物像や宗教を今に伝え、イベントなども行っています。
まずは塔に上ってみましょう。この塔は1869年~70年の1年少しで建設され、当時は外側にらせん状スロープを持つ3段の構成でしたが、今残るのは1段目のみ。頂上には十字架が掲げられており、そこから見る360度のパノラマは息をのむ美しさ・・・
遠くにアルチドッソ、カステル・デル・ピアーノ、サンタ・フィオーラなどの村も見えます。風がきついことも多いので、スカートは厳禁(笑)、道中や塔などの建設物の中もゴツゴツしていますので、歩きやすい靴が必須です。
下にあるのは信者を受け入れる施設で、1875年に完成した2階建ての建物。塔やこれらの建物は、ダヴィデの死の後に徐々に廃墟化していき、1995年の落雷で決定的な打撃を受けました。2003年~2004年にかけて修復が行われ、今の姿となっています。
塔の下には、細長い1つの穴が・・・暗所恐怖症・閉所恐怖症の人には難しいかもしれませんが、この岩に囲まれた奥には、礼拝所が残っています。
何ともミステリアスで、そして目に見えないパワーを感じるダヴィデの聖地。近年は、歌手で舞台俳優でもあるシモーネ・クリスティッキが、ここモンテ・ラッブロダヴィデの生涯を演じています。イタリアの社会問題などを批判することなく表現するクリスティッキは、精神病院の患者が残した手紙を詩とした歌「Ti regalero’ una rosa(君に一輪のバラを贈るよ)」で2007年にサンレモ音楽祭大賞を受賞し、このダヴィデの劇「Il secondo figlio di DIO(神の2人目の子)」でも高い評価を受けています。
トレッキングや自然が好きな方、歴史的宗教的モニュメントが好きな方、絶景が好きな方・・・目的は何にせよ、この地を訪れると何かしらのエネルギーを感じ、感動すること間違いなしです。車でしか行くことはできませんが、近郊にいらっしゃる際はぜひ訪れてみて下さい。
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基本情報
【行き方】
シエナから車で約1時間45分、グロッセートやピティリアーノから1時間10分。アミアータ山のアッバディアからは45分、サンタ・フィオーラからは20分。途中から舗装なしになりますが、ふもとまで車で行けます。柵のある手前に車を停め、そこから徒歩で15分ほどで山頂に着きます。
オルチャ渓谷やマレンマで滞在中に日帰りで行くか、アミアータ山(シエナ県側・グロッセート側)に滞在して周遊、またはオルチャ渓谷・アミアータ山からマレンマへの移動途中に寄るのがいいですね。
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