エルバ島いちの町は、ポルトフェッライオ。まさにエルバ島の玄関口で、特に夏場はひっきりなしにフェリーが発着する大きな港があります。地図で見ていただくと分かるように、がっつりと囲まれた湾に面しており、フェリーから見る旧市街に圧倒されます。中世までは「ファブリーチャ」という名でエルバ島各鉱山で採掘された鉱物の出荷が行われ、その名残はポルトフェッライオ(ポルト=港、フェッロ=鉄)という現在の名前にも。そして、トスカーナ大公・コジモ1世により現在の町が出来上がったため「コスモーポリ」、とも呼ばれています。そしてもう1つ忘れてはならないのが、1814年にエルバ島の王となったナポレオン。たった10か月の滞在に間に、ポルトフェッライオの町や港、そしてエルバ島にある各村をつなぐ道路整備など大改革を行ったのです。そんな歴史の足跡、そしてアップダウンのある路地や階段の町並み、そして要塞から見下ろす絶景など、見どころもいっぱいある町。
フェリーの港があるのはいわゆる「新市街」で、港を背に右側高みにあるのが旧市街です。旧市街入口までは徒歩で10分もかからないのも楽なところ。上写真の地図は旧市街下の海沿いにあったものですが、ご覧のように「ポルトフェッライオ、コジモとナポレオンの町」と掲げられ、「赤=メディチ家をたどるルート」、そして「青=ナポレオンをたどるルート」、「黄色=ローマ時代の遺跡」が記されています。しかし旧市街は小さいので、主要なものを混ぜて一緒に周るのが良いでしょう、大きな見どころであるナポレオンのムリーノ宮は会館日時が決まっている(2020年度は予約・定員制)ので、ムリーノ宮の見学日時に合わせてコースを決められたら良いと思います。ムリーノ宮の詳細はこちらをご覧ください。
さきほどのルート地図があったのが、まさにメディチの要塞の真下にあるこの広場。ここからてくてく坂を上っていくと、写真にも見えている門をくぐって旧市街に入っていきます。アーチを越えてすぐに要塞の入り口があるので、まず要塞から旧市街の全景とパノラマを堪能してみましょう。
ポルトフェッライオは、1548年に神聖ローマ帝国のカール5世からコジモ1世に統治権が与えられ、町の防衛強化のために要塞の建設が行われます。現在の旧市街西側の一番高い場所にファルコーネ要塞、東側にステッラ要塞、そして半島の先にリングエッラ塔を建設し、それぞれを城壁で結び、かつ周辺に堡塁を増築。エルバ島の他の要塞がたびたび襲われたのに対し、このポルトフェッライオの要塞は海賊たちの攻撃にも屈しない鉄壁だったそう。実際、ファルコーネ要塞に行く手前の堡塁を歩きましたが、強固な壁に入り組んだ構造、そして海の視認性も完ぺきなものでした。今では敵でなく、旧市街とフェリーが行き来する湾を眺められる絶好のパノラマポイントとなっています。
毎日8時~20時まで門が開いており自由に散策できますが、私たちが行った2020年9月はファルコ―ネ要塞への道は門が施錠されており、行くことができませんでした。南側は上記写真のように東側のステッラ要塞、旧市街、リングエッラ塔が見られますが、北側は自然保護区となっている人気のホワイトビーチ、レ・ギアイエやパドゥレッラビーチも見られます。
要塞を下りて、カルミネ通りを北東に行き、坂を上った先の右側は、ナポレオンのムリーノ宮。
そこからは下に行ける路地や階段があちらこちらにあるので、路地好きの方は嗅覚を効かせて歩いてみて下さい。どこを通っても情緒があり、そして先に見える港や海がとても美しいですよ。
そして、旧市街ほぼ中央にあるのがポルトフェッライオの市役所。ナポレオン別荘見学時にガイドさんが教えてくれたのですが、ナポレオンが到着すると聞いたポルトフェッライオの人は、歓喜と動揺の中、とりあえずこの市役所の2階8室をナポレオンの仮の住居としてしつらえて提供したそうです。
しかし、フランスの皇帝であったナポレオンには気に入られず?1週間ほどでここを後にし、現在のムリーノ宮の庭で軍事用テントを立てて滞在し、ムリーノ宮建設を監督していたそう。戦争に負けて亡命状態でやってきたとはいえ、かのナポレオン!のどかな島の人々にとっては衝撃的なイベントであったには違いなく、こうして市役所を見上げると当時の狂乱が頭によぎります。
市役所から海方向に出て、長いカヴール広場を東に行くと、右側には門が。そこから海沿いに出ると、いかにも港町らしい風景が見られます。門を背に左に行くと、国家治安警察隊(カラビニエーリ)の建物、そしてリングエッタ塔のふもとには考古学博物館が。このゾーンの港は国家治安警察隊など国機関の船や漁船、そしてプライベートヨットやクルーザーの停泊所になっており、なかなか壮観です。なので、町側にあるお店やホテルもなんだかハイソで、とってもリゾートっぽい一角。
このまま海沿いを歩いていくと、出発地点だった要塞下の広場に出ます。要塞やムリーノ宮などを見学しても半日、ふらっと散策だけなら2時間程度。フェリーの乗下船前後に散策しても良いですし、車がなくここを起点にバスで動く方は、毎日少しづつ散策するのも良いですね。先ほど書いたように、旧市街からすぐ徒歩圏内でも、レ・ヴィステ(ムリーノ宮近くの道から、下る階段あり。ギャラリーに写真掲載)、レ・ギアイエ(新市街はずれ)の美しいビーチがあります。
ポルトフェライオからツアーも出ている要塞や
バスで15分で行けるナポレオンの別荘ヴィッラ・サン・マルティーノ
を訪問しても。町とビーチが両方楽しみながら、ゆっくり滞在がいいですね。
ギャラリー(クリックすると拡大します)
基本情報
ポルトフェッライオ市・Vivere Portoferraio(イタリア語)
INFOELBA・ポルトフェッライオ市(英語)
【行き方】
本土・ピオンビーノからフェリー各社で約1時間。フェリー港から旧市街はすぐそば。ポルトフェッライオからはエルバ島の主要バス路線が出ています。エルバ島の行き方やバスについては下記リンクをご覧ください。
愛すべき、美しい30の村
飾らない、ありのままのイタリアへ!人口や景観など、「イタリアの最も美しい村」協会が設けた厳しい基準を満たした村だけが加盟を認められる「イタリアの最も美しい村」。その中から、イタリア在住20年以上、トスカーナ州の田舎町に暮らす著者が、“忘れられない”30の村をセレクト。古きよきものが息づく小さな村の魅力を、旅先での出会いやエピソードをちりばめながら綴る。
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「トスカーナのおうちごはん春夏編20レシピ」
「コロナ・ロックダウン緩和直後のイタリア・フィレンツェ記録写真集(モノクロ版)」
「コロナ・ロックダウン緩和直後のイタリア・フィレンツェ記録写真集(カラー版)」
「トスカーナのおうちごはん秋冬編20レシピ」
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