トスカーナ料理と一言で言っても、その地方だけに根付いた独特の料理も数多くあります。マレンマ地方はこちらの記事にも書いたように羊を多用し、また「小さなエルサレム」でもあるピティリアーノでは、ユダヤ人の食文化も取り入れたものなど、他では食べられないメニューも多々。そんな伝統的なマレンマ料理をこれでもか!と堪能されてくれるのがこちら、Il Tufo Allegro。意味は「陽気な凝灰岩」、凝灰岩の村・ピティリアーノならではのネーミングです。
お店は旧市街を入って南側のメインストリート・ズッカレッリ通りをまっすぐ行き、左側。この通りに面して入口はないので、手前に看板と矢印が出ています。ミシュランやガンベロ・ロッソなど、数々のレストランガイドに掲載されている有名店だけあって、店内は満席!入ってすぐのホールは4テーブルほど、その先に同程度のスペースと更に下にも同程度のスペースがあるので、全部で50席ほどでしょうか。ともあれ、予約がベターです。
メニューは伝統的なマレンマ料理のオンパレードで、その中でも「Goym」と呼ばれるマレンマ食文化とユダヤ食文化が融合した料理が特徴的。Goym=ユダヤ人以外、という意味で、ピティリアーノに住むユダや人がピティリアーノ人を指して使っていた言葉だそうです。Goym料理、そしてスローフード協会の保護食材・料理にはメニューにマークがついていますので、ぜひチェックしてみてください。単品の価格は高めですが、このGoym料理コース&スローフード協会の保護食材・料理のAlleanzaコースは、フルコースで30ユーロ前後とかなりお得な内容になっています。私たちはGoymコースに単品を組み合わせ、前菜からデザートまでマレンマ料理を堪能しました。
オーダー後に出てきたのは、サービスの白いんげん豆のクリームスープ。白いんげん豆はリボッリータなどトスカーナ郷土料理に欠かせない豆で、肉の付け合わせとしても良く出てくるお馴染みの食材です。これがも~うなめらかな舌触りで、カリッとしたパンチェッタとクルトンによく合います。
Goym料理コースの前菜は、レバーのクロスティー二。トスカーナ料理の定番の前菜ですが、マレンマでは鶏レバーでなく羊のレバーを使用しています。
そしてプリモは、リコッタとほうれん草のスープ。以前ソヴァーナのレストランでも食べましたが、これが羊のお乳のリコッタチーズだったとは当時は知りませんでした!まだ少し肌寒かったので、身にしみいるような美味しさ。単品で頼んだもう1つのプリモは、シエナ県を中心にトスカーナ南部で食べられる郷土パスタのピチ。ニンニクが効いたトマトソースはシエナ県でが「アリオーネ」と呼びますが、マレンマでは「アリアータ」。車で1時間程度しか離れていないのに、ここでも地方の差が出てくるのが面白いですね。
そしてメインは、やっぱり羊、トマトベースで煮込んだ Buglione=ブリオーネ。トスカーナ方言で「ごちゃ混ぜ」と言う意味で、羊のいろんな部位を煮込んでいます。羊はグリルかフライで食べることが多いのですが、この煮込みがもう言葉にできない美味しさ・・・シンプルに煮込んであるだけだと思いますが、もう肉もソースも旨味がガッツリ。ソースも全部、パンですくって、お皿を拭くくらいまで残さず食べて頂きたい一品です・・・単品のイノシシの黒オリーブ煮込みも同じく、肉もソースも美味しく、また見た目も美しいお料理の連続でした。
そして最後ももちろん典型的なGoym料理、Sfratti=スフラッティ。名前の由来は、ユダヤ人がピティリアーノのゲットーに行くためにSfratatto=退去させられたからで、その時にユダヤ人の家のドアを叩いた棒の形に焼いたものをスライスして頂きます。詰め物はハチミツ、クルミ、アニスなど。もう1つがトッツェッティ、見た目も味もカントゥッチなのですが、トッツェッティはラツィオ州やウンブリア州での呼び名でいろんなバリエーションがあり、アーモンドよりヘーゼルナッツが使われることが多いそう。マレンマは同じトスカーナ州でも北のフィレンツェより、もっと近いラツィオ州の文化が入っているものも多いんですね。デザートワインはお馴染みのヴィンサントです。
他のデザートも美しく美味!こちらはリコッタチーズのムースのチョコレートと梨のコンポート添え、もちろんリコッタは羊乳のものです。
さすがミシュランの常連だけあって、お値段はやや張るもののクオリティの高い料理ばかり。もちろん庶民的なお店ではないですが、上品すぎず子連れでも問題なし(うちの家族以外にも子連れ数組あり)。スタッフも感じ良く、せっかくピティリアーノまで来たのなら絶対に行って頂きたいお店です。
ちなみにここは、2017年より帰省時にイベントをさせて頂いている、その名も「ピティリアーノ」の小林シェフが修行されたお店。材料のいくつかはマレンマから直接仕入れ、まさにこのお店の味を日本で忠実に再現されています。師匠であるドメニコシェフのお顔は、大阪のピティリアーノさんで先に見ていたのですが、その愛嬌のある顔と独特の髪型はインパクト大!予想通りとても気さくな方で、写真まで一緒に撮らせて頂きました・・・関西人としては、「若かりし頃の鶴瓶師匠!」とやけに親近感が湧いたのは内緒です(笑)
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基本情報
Ristorante Il Tufo Allegro
Vicolo della Costruzione 5, Pitigliano
Tel : +39-0564-616192